02(2/2)


「じゃあ、僕もう行くね」
「もう戻んのか」
「ん」

シャワーを浴びて、ソファの上に散らばっている服を着る。後ろから鷹栖が二度目のシャワーを浴びて出てきた。
―――僕と違う高校に通っている鷹栖とはあまり会う機会がない。僕は全寮制の男子校、しかも生徒会の副会長だし。鷹栖は寮には入ってないけど、寮付の男子校の生徒だったりする。
だけどそれは鷹栖には言ってない。僕がどこの高校に通っているとか、家族構成とか。お互いに名前と住んでるとこくらいしか知らないで付き合っている。それが僕と鷹栖は気楽だからいいし、僕にとっても都合がいいけれど。鷹栖が僕よりも年上なのはわかってるし、浮気症なのも知ってる。それで充分。


「ばいばい、鷹栖」
「―――蘭」

とびっきりの笑顔で、お別れ。
これからたぶん、もっと来る回数は減っちゃうと思うし。
またねじゃなくてばいばいにしたのは、ちょっとした僕のけじめ。
別に別れる気なんてないけど、ね。

立ち去ろうとすると、鷹栖が僕の右腕を掴んで呼び止める。

「なに、ど――んう」

唇が押し付けられる。びっくりしてとっさに開いた唇から舌が入り込む。外に続く扉にもたれて、長いことキスをされた。
別れのキスにしては長くて濃厚。唇が離れたとき息切れするとか。

「…はあ、鷹栖、なに…っ」
「―――別に、なんもねえよ」

なんでもいいとは到底思えないんだけど。
まあいっか。

「じゃあね、鷹栖」
「ああ」

満足げに笑って、今度はふつうにお別れできた。




――――さあて、これからいろいろ楽しもうかな。


昔父親の主催のパーティで知り合った、どっかの会社の役職つきの俺様なイケメン。
うちの高校の卒業生で、今は大学生のチャラくて有名だったヤリチンなイケメン。
多分、鷹栖もいれて、3人に共通するのは、浮気症の最低男だということ。

だけど僕は、浮気しようが最低だろうがなんでもいい。
いろんなタイプの人と付き合って、その人の望むがままの「違う自分」を作って、恋愛というゲームを楽しみたい。

セックスはしない。浮気になっちゃうから。僕の中での浮気のボーダーは、恋人がいても体の関係があるだから。
もしも僕が堕ちちゃった場合は、それこそその人一筋になるためにあとの2人とはきっぱり縁を切る。


ねえ、誰も不幸にならないでしょう。



- 2 -

top | →

×
- ナノ -