03



「だめ、宝」
「なんでだよ」

自分のネクタイを解いて、ボタンを一つずつ外す宝は妖艶で、男くさい。
鷹栖よりもがっついている。同じ高校生なのに、人それぞれ違うんだな。なんてどうでもいいことを考えていると、僕のシャツのボタンに手をかけられた。

「そういうの、今自重してるの」
「彼氏いねえのに?」

手首にキスを落とされる。チュ、チュ、リップ音が生徒会室には不釣り合いだ。


「いや、彼氏はいるよ。まだ付き合ってる」
「…は?」

その言葉に宝は目を丸くして愛撫を止める。

「今は、運命の相手を探してる途中なんだ」
「……はあ?」

リアリストの宝がわけがわからないと、眉をひそめる。起き上がって髪を掻き揚げながら、うさんくさそうに僕を見た。

「なに、お前そんなこと信じるタイプだったっけ」
「いや。でも僕も遊びたいと思ってさ。鷹栖は浮気ばっかする男だったけど、僕ばかりが我慢するのはおかしいでしょう?」
「…ようは切れたってことだろ」
「はは、そうとも言うね」


はああ、とまた一つ大きなため息を吐かれる。
そんなに呆れられると腹が立つ。

「それに、僕もほかの人と付き合いたいと思ったんだ。ただし、体の関係はなしにして」
「無理だろ、お前みて欲情しない奴なんていねえよ」


現に俺だってそうだ、と誇れないことを誇らしげに言い張る。


「だから一つ甘えを加えたよ」
「あ?」
「キスだけならオッケー。だって向こうじゃ挨拶でも気軽にされるでしょう?」
「マウストゥマウスはねえけどな」

ああ、なにを言っても宝には無駄らしい。
それならば。


僕は唇を一舐めしながら、宝の首に腕をまわして思い切り引き寄せる。


「なに、僕とキスしたくないの?」



ニヤリと意地悪く笑った唇が、そのまま僕の呼吸を奪った。

(どっちがイヌだよ)

まるで獣のように粗々しいキスで、クールなこいつはキスするときは情熱的になるんだと少し驚いて、そのまま僕も舌を絡ませることにした。



おわり



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