「だめ、宝」 「なんでだよ」 自分のネクタイを解いて、ボタンを一つずつ外す宝は妖艶で、男くさい。 鷹栖よりもがっついている。同じ高校生なのに、人それぞれ違うんだな。なんてどうでもいいことを考えていると、僕のシャツのボタンに手をかけられた。 「そういうの、今自重してるの」 「彼氏いねえのに?」 手首にキスを落とされる。チュ、チュ、リップ音が生徒会室には不釣り合いだ。 「いや、彼氏はいるよ。まだ付き合ってる」 「…は?」 その言葉に宝は目を丸くして愛撫を止める。 「今は、運命の相手を探してる途中なんだ」 「……はあ?」 リアリストの宝がわけがわからないと、眉をひそめる。起き上がって髪を掻き揚げながら、うさんくさそうに僕を見た。 「なに、お前そんなこと信じるタイプだったっけ」 「いや。でも僕も遊びたいと思ってさ。鷹栖は浮気ばっかする男だったけど、僕ばかりが我慢するのはおかしいでしょう?」 「…ようは切れたってことだろ」 「はは、そうとも言うね」 はああ、とまた一つ大きなため息を吐かれる。 そんなに呆れられると腹が立つ。 「それに、僕もほかの人と付き合いたいと思ったんだ。ただし、体の関係はなしにして」 「無理だろ、お前みて欲情しない奴なんていねえよ」 現に俺だってそうだ、と誇れないことを誇らしげに言い張る。 「だから一つ甘えを加えたよ」 「あ?」 「キスだけならオッケー。だって向こうじゃ挨拶でも気軽にされるでしょう?」 「マウストゥマウスはねえけどな」 ああ、なにを言っても宝には無駄らしい。 それならば。 僕は唇を一舐めしながら、宝の首に腕をまわして思い切り引き寄せる。 「なに、僕とキスしたくないの?」 ニヤリと意地悪く笑った唇が、そのまま僕の呼吸を奪った。 (どっちがイヌだよ) まるで獣のように粗々しいキスで、クールなこいつはキスするときは情熱的になるんだと少し驚いて、そのまま僕も舌を絡ませることにした。 おわり ← | top | → ×
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