02



「学園の奴らが騒いでるぞ。蘭様が別れたって」
「ふうん」
「それでお前のことどーにかしようとしてる奴らもいるみてえだ。気をつけろよ」

書類にさらさらと走り書きをすると、長い脚を下ろしてそのまま僕の座っていたソファに腰掛ける。

「なんで隣に来るの」
「隣にいたいから」
「あっそ」

宝の言動は特になんの意味もない。
中学からずっと一緒だったけれど、こいつは好きと言った相手を笑いながら殴れる、そんな意味のわからない男だ。100%信用ならない。
普通なら胸が高鳴る場面かもしれないけれど、僕はただ前を見つめるだけ。


「まあ、ほんとに気をつけろよ」
「……ああ、うん」


一瞬なんのことか分からなかったけど、すぐに学園のうわさについてのことだと思い出す。


「大丈夫、うちには優秀なイヌがいるから」
「ちょっと妄愛的な?」
「うん」


険のある目にさらされながら、それでも僕の帰りを待ち続ける、かわいいかわいいイヌ。


「かわいいけれど恋人にはしたくないな。アイが頬を染めながら腰を振ってる姿、容易に想像できるし。その下で興醒めするのも」
「へえ、お前、あのイヌ相手でも下なのか」
「うん。僕上よりも下の方が向いてるし」
「…へえ」

宝が淹れてくれた紅茶を置いて、常備してあるクッキーを口に運ぶ。

「一回抱いてみてえな、お前」
「…え、それはだめ」
「なんでだよ」

ああ、この顔は本気だ。面倒くさい。
いつの間にか宝が僕のほうを向いて、それからゆっくりソファに押し倒していく。背もたれから腕をすべらせ、あっという間に僕を閉じ込めた。



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