現状確認




「ふおおおお……どうしよう……っ!!」

成は頭を抱えて先ほどの出来事を思い返した。
呼び出されて、行ったら神田くんがいて…。

「なるちゃん、王子になに言われたのー?」
「きゃわあああ」
「…なるちゃん?」

成が誰かに呼び出されたことを知っているクラスメイトが成に話しかけると、いきなし奇声をあげて両手をぱたぱたとし出す。

「(かわいい)どうした?」
「えっえっ…」

軽くパニック状態なのか、ひたすらぱたぱたとしながらクラスメイトを見上げる。
そうして一通り慌て尽くすと、今度はじわりと涙目になりながら。

「どうしよう……ぼく、明日からいじめられちゃうよぉ……」

クラスのマスコット、今は学校でも男女関係なく愛でられている成が泣きだすと、それはみんな慌てだす。
お菓子を持ち出したり、歌を歌いだしたり、すべらない話をし出したり、ひたすら慰めたり。
教室内はカオスだった。





「…王子に告白された???」


どこのどいつだなるちゃんを泣かしたクソ野郎はと殺気立っていたクラスメイトたちは、想定外の言葉に各々の反応を示した。だけど共通するのは、皆ほっとしたということ。

「なんだ…告白されただけか…」
「王子か……よかった……」
「よ、よくないよ!!」

いきなしよかったねーと解決ムードに流れていった雰囲気に、成は小さな体を震わせて抗議をする。

「だ、だって、相手はおーじさまだも!」
「うん」
「ふぁ、ふぁんくらぶだってあるんでしょ!?」
「そうね」

といっても、どこかのような過激派というものではなく、純粋なファンクラブである。制裁なんてしない、ほのぼのと王子のことを愛でる。
ちなみに成にもファンクラブが存在しているが、そのことはもちろん本人は知らない。非公認というわけではないのだが、何回言っても冗談だと言って本気にしてくれないのである。

――――ようは、成は自分の人気の高さを理解していなかった。


「ぼ、ぼく、ふつうの一般の庶民だも!平民だも!!」


―――それはこの公立高校のほとんどがそうです。


「お、王子なんて王国の人と、しゃべっただけで怒られちゃうよ…っ!」


驚愕の事実。
有川成は、神田周が王子と呼ばれている理由を、「本物の王子様だから」と勘違いしていたことが発覚した。



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