ほのぼのでいいんじゃない?


生徒会長の椿響汰(つばき・きょうた)と、その親衛隊長の霞真白(かすみ・ましろ)は、今生徒会室で二人きりで仕事をしていた。
気を利かせた副会長以下の役職のみんなが出払ったことに、椿は知っていたが鈍い真白が気づくはずもなく。

(か、会長とふたりっきりです…!)

緊張と、苦手な会長と二人きりという状況に内心冷や汗がだらだらと真白。それに気づいた響汰は、緊張するとこわばって酷いことばかり言ってしまう不器用な自分自身に呆れた。それによって、響汰の気持ちはいつも空回りをしてしまう。
最初に出会ったときも、近くに真白がいることに無自覚のうちに距離を詰めてしまっていて、それに頬を赤く染めて上目使いをしてくるものだから。
(音楽室は防音、防音…)
(押し倒しても喘がせ放題だぜ!)
そんな悪魔のささやきが耳元で聞こえたけれど、響汰はそんなことできなかった。
(これ以上距離置かれたら、俺は死ぬ…)

まっすぐ自分を見つめてくる真白に耐え切れず、照れ隠しで冷たい言葉を投げかけてしまい、生徒会室に帰ってからは脳内で(´・ω・`)の嵐だった。

「つ、椿会長…」
「あ?」
「え、ひゃ、なんにもです…」

響汰が昔のことを思い出している間、無意識に真白をガン見していたらしく。
それに恥ずかしくなった真白があわてて止めようとするけれど、冷たい目線を向けられて思わずしょぼんとする。
泣きそうになって俯く真白を見て、響汰もしょげる。
しばらくは二人また黙々と作業をしていたが、このままではいけないと響汰は手を動かしながらも、この状況を打開するための話題を模索していた。

「…真白」
「は、はいっ!」

そんなびびんなよ、と思いつつも、響汰は言葉を続ける。

「…お前、図書委員なんだよな?」

本好き、という情報を前親衛隊長から聞いていた響汰は、あたりさわりもない話題から攻めていった。

「あ、そ、そうです!」
「本好きなのか?」
「は、はい…!」

緊張からか、頬を真っ赤に染めてうなずく真白は破壊的にかわいらしい。

「か、会長は…」「?」
「会長は、本読まれますか…?」

初めての真白からの質問に、脳内響汰が祭りを始めた。
(わっしょいわっしょい!!!)
桜吹雪が吹き荒れるほどの喜びに体が満ち溢れる。

「あー、読むことは読むけど、最近は忙しくて読んでねえ」
「そうなんですか?大変ですもんね…」

しーん。
会話終了。
響汰の喜びは一瞬で終わり、また気まずい沈黙が落ちる。
と思ったら。

「こ、今度、もしよろしかったら、図書館に来てくれませんか?」
「…え」
「あ、あのっ、僕、今度の木曜日、図書委員で当番なんですっ。会長が忙しくなかったらですけど、僕のオススメの本とか、読んでほしいなあ、とか……」

思ったんですけど、ごにょごにょ。
あまりにも響汰の反応が薄いため、一人興奮していた真白は、自分を戒めるように声のトーンを落としていった。

「それってデートの誘いか」
「え?」
「あ?…いや、別に」

ぼそりとつぶやいた言葉に反応され、ゆるやかに首を振る。
(会長さまになんてことゆっちゃったんだろう…僕…)
今度こそ羞恥で消えてしまいそうになる真白に対し、響汰も頬を赤く染めて

「まあ、行ってやるよ」

だいぶ上から目線だけど、なんとかそう返事をした。
その言葉に真白が、本当にうれしそうに笑うから。
響汰は、たまんねえなぁと珍しく笑みをこぼすのだった。


end


椿会長はひつの中でこんなヘタレ設定ですが、みなさん大丈夫ですか。



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