02


とはいっても、会長さまのことを何も知らなかった僕は、とりあえず新しく隊長になりました、ということを伝えるべく、先輩が呼び出してくれた音楽室で一人、緊張気味に会長さまを待っていた。

がらり、と大きな音を響かせて開いたドアに、びくりと体が揺れる。
長身の美男子が入ってきた、と思った瞬間、ばっと頭を下げる。

「…………お前」
「は、はじめましてっ、このたび、会長に新しく就かれた椿響汰さまの親衛隊長になりました、霞真白です……っ」

緊張でつっかえながらも、考えていた自己紹介を言い終わる。
だけどいくら待ってもなにも言ってくれないから、どんどん不安がこみ上げる。
(ど、どうしたんだろ…僕、何かしたかな…)
そろり、と下げていた頭を上げると、僕の方をじっと見下ろしていた会長さまとばちりと目が合う。
(わっ…かっこいい…!)
思わぬ近い距離にいた会長さまにおののきながら、整った容姿に顔が赤くなるのを感じた。

「…ふん、まァ悪くねえ顔はしてんな」
「……?」
「つかわざわざ呼び出しってこんなことかよ。めんどくせえ」
「…っ!」
「まーせいぜい頑張れば?」
はあ、と、面倒くさそうにため息をついて、会長さまは出て行った。
残された僕は呆然としながら、心配した先輩が迎えに来るまで、その場にいつまでも立っていた。

「あー…まあ椿くんは親衛隊嫌いだからー…」
「…どうして、ですか?」

あんなにいい子たちなのに。
話してみて、本当に楽しかった。
親衛隊というよりは乙男の集まりのようなもので、よくケーキの話や服の話、時には好きな女優などの話で盛り上がって。
わいわいとこれまで騒ぐことがなかった僕は、どれもが新鮮で楽しかったのに。

「会計時代のときに、親衛隊の誰かにしつこく迫られたみたいだよ。夜とか部屋に押しかけられたりとかして、うんざりしてたとか」
「…じゃあ、僕なんかもう大嫌いってことですよね……」
「いや、真白くんは例外だから大丈夫」
「?」

やけにきっぱり言い切った先輩に疑問は抱くけれど、あの冷たい視線を思い出して、ぶるっと背筋が震えた。



それから、会長さまはすれ違うたびに睨んでくるし、親衛隊のことがお嫌いなわりには頻繁にお茶会にいらっしゃったりする。そのたびに僕は緊張するし、やっぱり隊長の隣というのが定位置なのか、いつも僕の隣に座ってくるので、せっかく美味しいケーキや紅茶が広がっているのに味がわからないほどで。

そしてたびたび生徒会室に呼び出されては、雑用を命じられる。
これは親衛隊長として当然かもしれないけれど、一人で生徒会室に足を運ぶのは荷が重いので、これもやめて、ほしい…。

「おい、真白」
「は、はい…」
「紅茶入れろ」


「い、入れました」
「やっぱコーヒー」
「ええっ!?」


end


突然書きたくなった、会長×親衛隊長





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