それだけで特別。前篇



「そういえばあ、椿会長ってヘタレ代表なのに、真白の名前はきちんと呼べるんだぁ」

天然小悪魔っこ来栖、ずばっと核心を突く言葉を容赦なく相手に浴びせることから、ついたあだ名は「いばら姫」。もはや響汰に対しては敬う気持ちがないためタメ口である。
本日の被害者、というか最近もっぱらその毒舌のターゲットになっている響汰は、飲んでいたお茶を吹き出しそうになったが、真白が自分のために入れてくれた(正しくは入れさせた)ことを思い出し、気合で飲み込んだ。
真白も来栖の言葉に目を丸くして驚いている。そこで副会長の如月呉哉(きさらぎ・くれや)が定位置である来栖の隣に腰を下ろすと、ニヤニヤと面白そうな顔で来栖の意見に同調する。それを来栖はうっとおしそうな目で見ていた。

「おー、そういやそうだな」
「?如月センパイのことも名前で呼んでらっしゃいますよね?」

一人この質問の趣旨を理解していない白雪姫。
それにくっくっと顔を覆い笑いをこらえる呉哉。

「あーあ、鈍感なんだからぁ真白はもぉ」

ぷく、と面白くないと頬を膨らませ可愛くご立腹な来栖。
響汰は脳内会議の最中である。
真白はきょとんと一人だけついてけていない状況に首を傾げた。

「かいちょ、」
「すとーぉっぷ!」
「!?」

助けを求めようと隣に座っている響汰を呼ぼうとした途端、来栖が身を乗り出してそれを制する。

「なんで会長なの?」
「え…?」

びっくりしすぎて思わず響汰の腕に自分の腕を絡ませ、街中で彼女が「おばけこわぁい!」と彼氏に抱きつくような形で固まってしまった真白。それに気づいた響汰は、

(真白が腕に真白が腕に真白が腕にマシロウデ…!!)

キャパオーバーである。
それに気づいた呉哉が響汰の頭をはたくと、はっとしたように世界をこちらに戻した。

「てめえ童貞みてえな反応してんじゃねえよ、男なら―――」

こうだろ、と響汰と真白の肩を外側から押し更に密着させる。

「ひゅうひゅう!やっぱ親衛隊長とその対象なんだから、このくらい密着してないとねぇ!」

かなり意味の分からない理屈を来栖流でぶつける。

「じゃあ来栖も如月センパイとぎゅうってしないの?」

天然真白からの思わぬ反撃に、固まる来栖に喜ぶ呉哉。
響汰は真白の「ぎゅう」発言と近すぎる距離に脳内で今花火が上がっているため戦線離脱である。

「や、僕たちはぁー…」
「そうだな、霞の言う通りだ」

にやにやと距離を詰められ、まさかの膝に乗せられる来栖。

「ちょっと…!?」
「お前ちっちゃすぎるから膝抱っこのがいいわ」

それを見ていた真白。

「…かいちょ、僕もお膝のっていいですか…?」
「ああ。――――あ!?」
「じゃあ…」

真白の上目遣いに反射的にうなずいた響汰は、内容に驚き声を上げる。が後の祭り。
見事真白は響汰の膝の上にのっていた。

(なんだこれ…)

生徒会室で膝抱っこをして見つめ合う。
シュールな光景である。





書くの楽しすぎて全然進まない…。



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