∴ 02

抱かれたい男ナンバー1の生徒会長が恋をしている。それは学園ではもはや公認の噂である。生徒会長である本人、国見統臥(くにみ・とうが)ももちろんそのことは知っている。
(うぜえな、いちいち…)
とりあえず校内新聞に貼り出すのはやめさせようと新聞部には圧力をかけた。

―――しかし自分が片思いしている人が誰かということまで周りにはばれていて、こっそりと会長の片思いが全生徒、教師に見守られているなんてことには気付いていなかった。


「―――おい、凪(なぎ)」
「ん?」


そんな会長は今日も好きな人に不器用なアタックをし続ける。

銀髪の制服を着崩した生徒が振り向く。
その人こそ天下の生徒会長を恋する少年へと変化させた人物、風紀委員長の時任凪(ときとう・なぎ)であった。

「お前ネクタイちゃんと締めろよクソ野郎。風紀が風紀乱してんじゃねえよ」
「んだとテメエ。お前こそどこでも盛ってんじゃねえよヤリチン」
「もうしてねえよ」
「は?ありえねえだろお前が」
「お前……」

(なんで新聞にまで取り上げられて全生徒が知ってんのに、肝心のお前だけは知らねえんだよ!!!!)

――彼、時任凪は学園の事情にはまったく疎い、超鈍感な男だった。


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