∴ 05 努めて冷静さを保っていた統臥も、これには心臓がばくばくで凪の方を見上げる。 「な、なんだ?」 凪が腰をかがめて統臥の両肩に手をつくと、そのままキスするか、と全生徒が思った中、唇は大きく進行をはずれて統臥の耳元に移動すると、片手を立てながらそこでこそりと小さな声で、 「統臥のおかげでネクタイ結べた。ありがと」 それだけ言い自分の席にマイペースに戻っていった。 静寂に包まれた異様な雰囲気の中、凪だけはいつも通り朝の用意をしていた。 そのあといち早く現実に戻った陽摘の声で、はっとしたように集まっていた生徒が自分たちの教室に戻っていき、事態は収束した。 「ちょっと統臥!!!どういうこと!?」 「昨日ネクタイ結んだお礼に呼び捨てしろって言ったら、こうなった」 「グッジョブ!!良くやったよ統臥!!!」 その図はお母さんと褒められて照れくさそうにしている息子のようだ、とのちに生徒たちは語った。 「そういやお前、浮気症の社会人の彼氏はどうなったんだよ」 「は?別れたよそんなの!」 「はあ?いつの間に」 「わかんないけど、ちょっと前かな。もうあっちにかまってるより統臥たちのことが気になって気になって…!!!」 「…まあ、お前ならすぐ相手見つかるだろ」 「でも今は統臥と凪くんが先決だからね!」 「……お前は俺のなんなんだ」 「親衛隊長兼、会長の恋を応援し隊のリーダーだよ!」 「なんだそれ!!!」 end ネクタイがゲシュタルト崩壊。 オチに陽摘を使うのをやめたい。 |