∴ 03

しょぼん、と犬耳が生えてたら明らかに垂れ下っていると思うほど沈んでいる凪をどうにか慰めようと、統臥はしどろもどろに言葉を探す。

「あー、まあ、頑張れよ」
「…おぅ」

いつの間にか向かい合わせで座っていた二人。統臥はいち早くその距離感に気づき顔を赤く染める。
(ちけえ!!)
これはいつかの壁際の再来だ、と今度こそはこのチャンスをものにしようといろいろ画策していると、突然凪が俯いていた顔を上げる。

「そーだ!国見、ちょっとここに座れよっ!」
「はあ?」
「いいから!」

はしゃいでる凪に水を挿すのはやめよう、と統臥は凪の言うとおりソファに座る。

「もーちょい足広げて」
「?こうか」
「そうそう。じゃあ、よいしょっと」
「!?!?!?!?!?」

あろうことか、凪は統臥の足の間に座り、統臥の胸元より少し上に頭をもたれさせてきた。
緊張で動けない統臥を尻目に、凪は固まっている統臥の両手を自分のお腹にまわすと、そのまま胸元までたぐりよせ、

「よし、国見、この状態でしばってー」
「どこを!?」
「はあ?ネクタイだよ決まってんじゃん」

思わずR指定のSMプレイの想像をしてしまった統臥は反射的に聞き返すと、心底馬鹿にした声で凪が呟く。
ネクタイね、ネクタイ…。そりゃそうだ…。
見当違いなことを想像していた自分を恥じる。

(しかし、この密着度はやべえな…)

綺麗に染まっている銀髪が、前かがみになる統臥の顔をくすぐる。
(いいにおいするし…)
「国見いー匂いすんね。香水なに使ってんの?」
「え、あ、ああ」

自分と同じことを考えていた凪にちょっぴり動揺しながら自分の愛用する香水の名前を言うと、覚えるように凪が同じ言葉をつぶやいた。

「…だから、こうするだろ?」
「うん」
「で、こうして、こうして、ここを通して…こう」
「おお!」

最後にきゅ、と結ぶと、ちゃんとしたネクタイが完成した。

「すげえ、できた!!サンキュー、国見!!」
「お、おう」

ぐるり、とその体勢のまま凪が満面の笑みでお礼をいうものだから、統臥は自分の息子がエレクトするのを必死におさめようとするのでいっぱいだった。


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