∴ 02

「うわ、お前書類で埋まってんじゃん!」

凪が扉を開けて真っ先に目に入ったものは、一番奥の席の他よりも立派な机で、目をみはるほどの書類を処理している統臥の姿だった。

「いそがしそーだな…じゃあ、迷惑になるだろーし帰るわ」
「―――っ!あ、いや、今ちょうど休憩しようと思ってたところだし、お前が余計な気回す必要はねえよ」
「うぜー。まあいいや、じゃあ…」

よいしょ、とふかふかのソファに遠慮なく腰掛けると、その隣に当然のように統臥が座る。

「お前向かいに座れよ、せめえじゃん」
「うるせえ、気分だ」
「変な気分だな」

統臥のへたくそな言い訳に対し、凪はまったく疑問に思わず、気分なら仕方ない、と潔く隣を譲った。

「今日はどうした?」
「あ、あー。お前さ、前おれにネクタイの結び方教えてくれるってゆったじゃん?」
「ああ」
「だから今日教えてもらおーとここに来たんだけど。お前今日休みだったから生徒会室にいるかなーって来てみたら、予想以上に忙しそうでびっくりした」
「まあ一日かけたし粗方書類はできた」
「ふーん、やっぱお前優秀だな」

にこり、と凪がめずらしく統臥を褒めるものだから、統臥は内心(頑張ったご褒美か…っ!?!?)と興奮しながら少しずれたことを考えていた。とにかくそれほどうれしかったらしい。

「ほら、今日ネクタイ持って来たんだよ……あれ、」
「なんだ、忘れたか?」
「あー…忘れた…。…あ、じゃあ国見のネクタイ貸してくれよ」
「っ、お、おお」

上目遣いで頼まれたら断れないだろう、と統臥は動揺しながらネクタイをほどいた。
しゅるるるる。

「おら。じゃあ、俺が指示してやるから、その通りに結べよ?」
「任せろ」
「じゃあ、まず――――」

統臥が丁寧に指示する通りに指を動かす凪。
だがしかし。

「…どうしてこうなった」
「…わかんない」

統臥がそう問いかけるほど、出来上がったものは悲惨だった。




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