∴ 05

「おい国見っ!」
「んだよ…」
「他の奴らには言うなよ、おれがネクタイ結べないってこと!」
「あ?んなくだらねえこと誰が言うか」
「…よし」

俺はそんな風に見えるのか、と統臥は自分に対する凪からの評価にショックを受けていると、

「じゃあおれとお前の秘密だからな」

――二人だけの、秘密。なんという甘美な響きなのか。
心の中でその言葉を反芻していると、

「あー…ネクタイくらい結べねえとな…」

ぽつり、と凪が呟く。どうやら独り言のようで、別に統臥に言ったわけではないらしい。思いのほか弱りきった声だったので、統臥は凪の細い体に腕をまわして抱きしめたくなった。
なっただけで実際はできなかったが、右手で凪の頭をぽんぽん、と撫でた。反射的に凪が上を向く。至近距離で目が合う。凪の瞳に自分が映っていることが分かった統臥は、熱に浮かされたように無意識に

「――結び方くらい、俺が教えてやるよ」

ファインプレーだったと、のちにこっそりと物陰から二人の様子を見守っていた陽摘は語った。


 end


ネクタイごときで…。
この話は終始失笑で見るものです…。



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