∴ うまくできない

時任凪(ときとう・なぎ)は毎朝戦っているものがある。

「…くそ、できねえ」

初等部から霧埼学園に在籍している凪だが、初等部の制服はリボン、中等部では学ランだったため、それに触れる機会はなかった。
―――それなのに、

「あー駄目だ意味わかんねえどういう形状じゃこれ……!!」

鏡を見て自分の胸元にかかったよれよれの物体。
それは高等部からブレザーへと変化した制服につきものの、ネクタイの無残な姿だった。
―――実は凪は高校2年生の今でも、ネクタイが結べなかった。
いつもはネクタイをつけず、誤魔化すようにワイシャツのボタンを開け、ネックレスやら中に来たシャツを見せていることで、いつも統臥からは「風紀なのに風紀らしくねえな」と言われていた。
今はまだいいとして、将来はスーツを着て会社に出勤しなければならない。このままではいけない、という自覚が徐々に凪にも芽生え始め、こうして毎朝ネクタイと格闘しているのだ。

「つかいい加減 国見がうぜえ……!!!」

確かに自分は風紀委員長らしからぬ服装はしていることは自覚済みだ。
しかし毎日毎日言われるとそれは腹が立つ。

「今日こそ国見をぎゃふんと言わせてやる………!!」

将来のため、が20%くらいの割合で、残りが、国見に対する意地であった。


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