∴ 03

学園の人気者が二人集まっていることで自然とまわりから注目を浴びている。立ち止まって二人を囲む、なんて不躾な真似をする生徒はいないが、意図的に歩くスピードを遅くしたり、小声で会話をしたりと二人の会話や姿が気になっているということは明らかだった。
注目を浴びているのに気付かず、二人は廊下の隅で会話を続ける。――正確には、統臥は気付いているが気にしていない、だが。

「まあお前が言ってることがほんとなら、風紀の仕事は結構楽になるなー」
「…うぜえ、信じろ」
「まあお前はうぜえけど、嘘はつかねえし、おれも信用してるしなぁ。そこまで言うんならほんとなんだろーし」
「…」
「何があったか知んねえけど、もうヤりまくんなよー」

じゃーな、とニッとさわやかに笑い凪は手を振って去っていくのを、統臥は呆然と見守っていた。
彼の頭の中では、凪が言った言葉がずっと反照されていた。

――信用している――

「……一歩、前進だな…!!」

――今まで嫌いやらウザイやら言われて嫌われてるかと思いながらも、今更凪に対して態度を変えることができず、凪に切れられ周りからなぜか変な眼で見られ、いつも自己嫌悪のループに陥っていた。
統臥の親衛隊長である陽摘(ひつみ)に言われた「そんなことばっかしてたら嫌われるよばかっ!!」と言われた言葉が回る。自分でもガキみたいなことばかりしている自覚はあったし、凪に嫌われているという最悪の定義が心の奥底にはあった。

――しかし、信用している、と言われた。

「――嫌われてはない、ってことだよな…!!」

そのひとりごとを聞いたとある生徒は語る。
―――風紀委員長に恋する前の、あの俺様な会長はどこにいったのだろう、と。

恋は人を変える。
まさにそれは、今の国見統臥を指すことだと、周りは頷き納得した。



end



あほの子 凪くんとヘタレ 統臥。
今回は凪より統臥のがあほになってしまった…。
なに、何が起きたの…?


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