あかいくちびる



真っ白なカーテンと真っ黒な折原臨也との対比はぱっきりと分かれて全く似合わない。それを眺める真っ赤な俺も似合わない。

「臨也さん、出してくれませんか」
「いやだよ、君にげちゃうだろ」
どくんどくん溢れ出す体内のもの、赤は性に合わないんですよ。似合ってるよ、自身の毛先を撫でる臨也さんの指は肉付きが悪かった。痛い、痛いけどそれと同じくらい気になったのは終始笑顔のままのこの人で、多分いまから俺はこの人に殺されるのだろう。はあ、考えてみれば無念ばかりが残るものでさよならを言う準備もしていなかった。「あれ、もう終わり?まだ話そうよ」ぺちりと叩かれた頬、感触はなかった。覗きこまれて視線が絡まって、臨也さんが頭から流れる血を掬い取る。

「素敵なリップソースだと思わない?」
ぐい、と親指の腹で血を唇の上へ引っ張った。口紅を引いたみたいで妙に生めかしくて似合っていて、ああでも頭は朦朧としてっちゃって、
(赤い、くちびる)
さあそろそろ死ぬのかなと覚悟すら決めたのに。のに。

「君の友達みーんな頑張ってくれたよ?みんな綺麗な唇をしてた。ね、彼女とキスしたいでしょう?」

首無しの反対側になった、彼女をみた
俺もああなるのかと思うと死ぬに死ねなくて、もう働きたがらない脳みそを自棄になってかき混ぜる。「臨也さんは、みんな、ああしてきたんですか」途切れ途切れだった。聞きとれてくれ、頼むから
「うん、意外に大変なんだよ?保存とかね。」ちなみに君が最後ですと、語尾に星がつきそうな勢いで伝えられた。

「みんな、揃えて、揃ったら、どうなるってんですか、」

「それは、」

それは。聞きたくない聞きたくない、やめてくれお願いだ、笑うな、笑うなよ笑うな。耳に、頭に腕を沿わせる、様々な思念が取り付いて我を忘れそうになる、嫌だ、そんなの嫌だ、でもこの男は許さないんだ、俺のと変わらない細っこい腕で思うより数倍も上の力でねじり上げられる。こすれた口紅が上に突き出していく

「とても、素敵なことだねえ」

 

甘い腐臭のするソレのあとに鉄臭いものも重なった。真っ赤な臨也さんがこの上なく、うっとりと、している
「好きだよ、正臣くん」
 

 



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