漏斗


俺はもう十分にやり合ったと思う、腹を空かせた怪物みたいなあれと心行くまで、もう何も残らない位に多分
これが臨也の言い分だった。空っぽなんだと。そこで僕はと言うと相槌を打つことしか選択肢はなく、仕方なくそれは適当になりその適当な相槌にまた相槌が帰ることはまるでない、そこに問いただす野暮な真似はしない。要するに、興味がないということ。誰だってそう、言えばそれでいいんだ。何もないよって言えば言えればそれで、もういいんだと奥で呟く。(それが心の内だとして、そうここにはもう何もないよ。だからいいよ。空っぽなんだよ。)

「何もないはずで、そうじゃなきゃ」
「臨也。あるから君はここに居るんでしょう。ろ過し続けた、し過ぎちゃったんだよ君は。そうじゃなきゃ」

(平和島静雄に心を掴まれるなんて絶対に無いことでしょう)

君もしばらくやり続けた、分かり過ぎてしまったんだろう。知りたくないはずのものを知りすぎて余計な感情に気付いてしまって、諦めて見るふりを止めてみたらさあ何故だか心にマンホール。ただ垂れ流すだけのそこを覗いてみたら気付いちゃった。気付かなかったマンホール、の中に気付いちゃいけない汚い何か、毛嫌いしてたそれに気付いちゃったね。こう思うと僕は自身が精神科医にでもなったのかと錯覚を起こす、こうまで人の思いに干渉したがりだった?いや違うはず、気になんてならなかったのにな、僕が精神科に行くべきなんだろうな。なんだかひとつ越えてもうひとつが虚しい。

(気付かないままで良かったのにさぁ、馬鹿だな)


「そんなもの」
恋心なんてさ、好きになったことなんてさ、歳を取れば取るほど透き通るもので、涙なんかじゃ終わらないのにね。
「遅いよ、もう」

どちらともつかないこの発せられた言葉に汚水がかかる。それでめでたくマンホール行きだ。次はろ過され過ぎないようにね、まばたきひとつに目配せひとつ、さよなら、僕の君の誰かを愛しむまでの過程のひとつの下心




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