泥沼


何故だかどうして最近よく夢を見てしまう。決まって枕元に眼鏡を置いた時、誰かが持ち去るかのようにフレームをかつんと鳴らしてそこから僕が夢に行く。何ら関係性の無い事象と事象が玉突き事故、壊れるものが無いにも関わらず事故、壊れなければそれは事故ではない?これも戸惑いに浸かる。分からなければそのままで。
最初こそ戸惑いもしたけどこうも毎日現れてくれちゃ僕も見飽きるっていうか、戸惑いもなくなるよ?
「ねえ、臨也?」

今日はこんなとこかい?そう思いながらまたこれも色々と経験してきたので戸惑いにならない。一面が泥でふくらはぎまでしっかり浸かってくれる、白衣の裾も浸食されていった。ちらりと臨也の八重歯が覗く。

「面白くない、反応」

笑ったようなしかめ面のような顔も覗かせた八重歯も臨也らしかった。この臨也は本物でも偽物でもない、そもそも肉体がないただの人格なのだから真偽は関係ないのであって、そういうべとべとにこねた理論は泥のようだった。強欲であると思う。
昨日はスポンジの上、その前は箱、もっとまえは飴の瓶の中で。統一性もなければ君に悪気もない。夢でくらい何も考えずに居たいと思う僕の意向に反してこのわずかばかり僕より埋まった彼は八重歯を覗かせて笑っていた。

「ねえ好きだよ新羅、強欲だって言う?君が、君に、君を、好きだ」
「僕が好きだと言うなら僕の幸せを奪わないでよ寝たいんだ静かに、あとそれはきっと汚い、そうだね確かに強欲だ」

指で泥をすくって舌にのせる。ジャリジャリと転がったそれは紛れもない泥で青臭いような生臭いような何とも言えないようなものだった。今日いまここが泥である意味はなんなんだろう、全く見当がつかなくて唾と一緒に吐き出した。
臨也が言う。「ねぇ俺は世界より」臨也が言う。「誰かひとりに愛されたい」臨也が言う。「新羅でいいから、」臨也が言う。臨也が言う。

「愛してほしい」
臨也が言う。

「世界からの愛が、辛いとでも言う?」
細く言った彼の意向を下げるように訊ねれば八重歯は覗かなくなった。


「世界と俺の接点は」
どこにもない苦痛の中でね。

ずん、そうやってまた強欲、泥に沈んで行った彼は黒よりもっと茶色に侵される。僕が思うに彼の思うところの強欲は愛だろう。愛が辛いのだろうか。生臭い泥に侵される。バイバイさよならまたどこか、君と僕との接点で





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