糖質


「死にぞこないのくせに」
寒いせいでくすむ空にも吸い取れないくらいに。悔しい悔しい悔しい。なんで殺せないの撥ねてもダメ刺してもダメ何人で向かってもかすり傷?バッカじゃないのありえないだなんてこんなイライラさせられてんのもむかつく。ただ規則通りに動いてればいいのに乱して、時計みたくなっちゃえよ馬鹿が。死ねよ死ね。悪態だけがフェンスを越えた。季節だって時計回りに変わるのに何だって思い通りに行かないってんの?ほんとシズちゃんってば、

「……ありえないし」
むず痒い鼻をこすって横を向いたらシズちゃんが何故かいるわけで。何がだよってほんっとありえない、なんで着いてきてんだよバカ、問えば問うほど無駄なこいつだってのにいつだって忘れてるよ、あああもう狂う。狂う。

「嫌いだ」「そりゃどーも」
ずっ、鼻が鳴る。先端が熱い気がするし、心なしか耳も痛い。大体こんな真冬に追いかけっことか何かもう、馬鹿だろ
「君は死なないし、風邪は引くし、散々」
「死んでたまるかって話で、むしろ風邪なんかざまあみろって話だな」

シズちゃんが変に笑うもんだから顔が熱くなる気がした、というよりかすでに熱いのにまた熱くなって、もうよく分からない。風邪引いたも顔が熱いのもシズちゃんのせいだよ、責任取ってよ
(そんなこと言うわけないけど、さあ)


「前見舞いにやるよ、臨也くん」
大人しく風邪でも引いてろって言いながら何か投げてきて、さっさとどこかに逃げてった。手の中にすっぽりはまってしまった物を見てみる。飴だった。シズちゃんが?しかもイチゴミルク味。考えてみるとどうにも似合わなくって何だか吹き出してしまった。それに前見舞いって何?「バカじゃないの、ほんっと」

本当もう、何だって思い通りにいかないの。残酷性が足りない。こうなっちゃうと死にぞこないは俺だって分かっちゃうからやめてよ、やりきれないじゃん

「あまっ」
ピンク色した飴はバカなくらい甘くて、転がり回る。多分俺もきっと今こんなもんになっちゃって。責任取ってよ、シズちゃん

(好きになっちゃったんだよ)





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