ピンキー


「似合わないなあ」きらきらと輝くそれは酷く不釣り合いで不格好だった。まるであれだ、月となんとやら。俺の指にはひとつピンキーリング、机の上にもひとつピンキーリング。重ねてつけるってこととよく分かるようひとつは少しねじれた位置に小さな白い花ひとつ、もうひとつには小さな石ひとつ。「似合わないなあ」波江はこんなもん付けないし。首は首だし。
さてどうするかと考えて、ああそうだ、とひとつ沸いた名案のような、そんなことはどうでもいいけど名案だと括り付けよう。何にかといえば何でもいいや。しいて言えば俺の頭にかな。さて街に繰り出そうと時間を見れば23時20分、まあ頃合いだろう。ジャケットを羽織って事務所兼自宅を出る。

さて池袋へ着いてふらふら歩いていたらとっくに0時を回る数字が見えた。同時に幾度か見たワゴン車に近付いて、ああやっぱりドタチンだ。「何してんだ」だなんて言うもんだから俺はきらきらを見せる。どうだい可愛らしいだろ、と言えば不思議そうな顔をしていた。「今からシズちゃんに会いに行こうかってね」本来の目的を伝えると喧嘩すんなよ、と言うこと、それと何回かの言葉の受け渡しをしてドタチンと別れた。やっぱりこのきらきらはシズちゃんにあげよう。どう思うかなこんなきらきら。もの珍しいかな?

ひとつあいつに、ひとつじぶんに
あーお揃いっていいもんだね、憎たらしくってしょうがないよ、ああこれはシズちゃんには小さいからなあ、チェーンでも付けて首にぶら下げてもらえないかなあ、
「似合わないなあ」
そりゃそうだ、だってあいつは化け物だから。光り物になんか興味なくたっていいし似合いやしない。なのに何故だろうかあの化け物の周りにはきらきら輝くピンキーリングがいくつもいくつも転がっているのだ。


「似合わないなあ」

君はきらきらしちゃいけないのにさあ、と悪態をついて唇噛み締めて仕方ない独占欲を剥き出しにしておいてピンキーリングで縛るようなイメージを頭に浮かべるとなんだか自分がきらきらになれた気がした。ピンキーリングが壊れませんように。ついでに俺がもっときらきらになりますように。もっともっと、あとひとつついでに、あいつのピンキーリング全部壊れますようにと少し、いや結構真剣に、お願いしておこう。



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ふゆちゃんサイト1周年おめでとう!





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