互換性


べろ、舌を這わせてみればやっぱりしょっぱい。化け物のくせに人間の名残?駄目だよ君は人間になんかなれないのに、「起きたのか」残念、ずっと前から起きてました。「シズちゃんまずい馬鹿死ね」腰の痛みも合わせて君に鬱憤をはらしたいよ、と言っても彼は勘弁だなと答えて煙草を吸った。

「なあ」
「なに」

不機嫌とも取れそうな返答を俺は変えるつもりもない。だって変えることすらめんどくさくて。なら別にいいじゃん?うん、そうだよね。でも何してんだろうな、だなんて分かりきったことを今更言わないでほしいなあ

「何って、何」
「こういうの」
「セックス?」

ああそうか君は男は初めてか、「俺もわけわっかんないけどさ」そう、男なんて互いに経験するはずもなくて、あえて言えば今のこれは興味と好奇心とあと一つ、あーあ、なんかもういいや、どうだっていい。

「気持ちよかった?」
「微妙な感じだ」
「そ。俺も微妙な感覚だよ」

相手が良いんだか悪いんだか俺たちは到底分かり合える気もしなかった。俺はといえば気持ちよさ、のようなもの半分、痛み半分。快楽主義者はすごいよねえ、俺はまだまだ分かち合えそうにないよそんな馬鹿な人たちとは。なんか頭がぼーっとする。
俺たちがこんなことしたって知ったらみんななんて言うかなあ。シズちゃんは多分みんな信じないって言うけど、案外みんな信じちゃうかもね。はは、ありえるかも。ねーシズちゃん。


俺はもうひとつの愛のかたちを知って、彼もまたひとつ愛を知った。もう戻れないかもね。

「お前も馬鹿だよな、臨也」

シズちゃんの煙草の箱から1本取り出して、ライターを取るのも野暮ったくてシズちゃんに寄って火を貰う。大きく吸って、少しずつ吐く。

「お互いさまでしょ?」
君も俺も、実のところ互いに依存していたのかもしれない。迷惑同士お互いさまでそれでも俺たちは距離を持っていがみ合って行くのだと思う、そうだといいね、近すぎるのは嫌いだな


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