偏屈


暑いのはこっちだっていうのに上から重なって巻き付いてきて「暑い」だなんて君、それは絶対自分のせいだろ?僕は巻き込まれて暑い中をさらに暑く過ごしてるんだよ!なんて言ったところで臨也が離れるとも思えないし、だからあえて何も言わない。臨也もこういうとき何かを言われるのは嫌いだから。

「なんでクラスマッチとかやんのさ」ごく簡単な質問だけどそれに意味はないよ、あえて言えば親睦でも深めるんじゃない?と答えると臨也はそんなのやっぱり意味ないじゃん、って言った。だから意味はないって言ったじゃないか。でも夏のクラスマッチは本当に意味がない。暑いしだるいし、何よりこのやたら熱気があるのも無理だ。君も僕も合ってない。

「ていうか臨也は出ないの?バスケ上手いじゃないか」
「俺は無駄なことしたくないんだよ」

ああ消極的だなあ。まったくもって同意見だよ。そんなこと思ってたら門田くんが来てお前ら出ろよ、って言ってきた。「ひっついてないでほら」、って俺はともかく臨也にそんなお父さんみたいなこと出来るのは門田くんだけだよ。「ドタチンお父さんみたいだってさーあっは、似合ってる!」そして俺も巻き込まれてコートへ入れられそうになったから慌てて僕はいいよ、と言ったら臨也も俺も出ない、ってさらに締め付けてきた。もう、暑いってば。門田くんは仕方ないな、と言ってコートへ戻った。「午後は出ろよ」と残して、俺はまた臨也と2人。いつまで抱きついてるんだろう。

「ねえ臨也」名前を呼ぶと素直になに、と答えてきたので機嫌が良いな、と思ったので今更な疑問をぶつけてみる。「なんで抱きついてんのさ」臨也は少し目を開いて、眉を下げてすこしだけ、ほんのすこしだけど寂しそうな目をして笑ってみせる。

「どこか行っちゃいそうだったから」

ひどく幼稚な支配欲だな、とは思ったけれどそれを見過ごせない僕がいて少なくとも僕は君を忘れないよ、忘れようにも忘れられないし、なんて口走っていた。臨也の顔は変わらなかったけど「そうかも」と言ってより一層締め付けてきた。その腕から逃れようとしない僕も、少なからず彼に屈折した支配欲を抱いているのかもしれなかった。


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