欲張り


ばたばたばたと駆け寄ってみれば、たたたたとまるで恐れていないように余裕を持って逃げていく。飛べるからっていい気になるなよーと叫んでみれば、あぁ喉が渇いたと気が付いた。「ドタチーン喉渇いたあ」ドタチンは優しいから、自分で買えよ、って言うけど結局買ってくれるわけだ。

夏休み前日の午後、学校は午前中に終わるのが大半で多くの学生ははしゃいで遊びに行きあるいは部活に打ち込むといった姿を多く見かけるのだろう、だからこそこんな何もない、街灯と溢れる緑、うざったいくらい何もない空とのコントラストがまあまあきれいなこんな道には俺とドタチン以外誰もいない。「臨也、さっさと選べ」ほらねドタチンはやっぱり優しい。俺は決まってコーラを選ぶからまたそれかと呆れつつ言うけど、ドタチンじゃなかったら別に選びもしないし決めもしない。

「ねえドタチン」この呼び方はドタチンはあまり好かないみたいだけどこの呼び方は俺以外しないからなんだか特別な気分になる。俺しか知らないドタチン。何だかいーね。「俺ね、ドタチンといると何だか嬉しいよ」意味も分からない言葉だけどありのままだから仕方ない。コーラはドタチンの手の中のままに、俺はまた鳩に向かって駆け寄っていく

「今日は機嫌がいいんだな」だなんてそれじゃまるで俺がいっつも機嫌が悪いみたいじゃないか。別に不機嫌でいたくているんじゃないしとつっぱねる。ドタチンはまたほら、それ、と言ったけどそれなんて分かりゃしないよ。おんなじか分からないけど鳩はやっぱり飛ばなかった。平和の象徴は相も変わらずのうのうと生きていくんだなあと思うと急に憎たらしくって醜くなった。


「鳩、嫌いだな」別に俺は博愛主義じゃないから。それと共にドタチンに図々しくひっついて歩いている鳩に俺は睨まれた気がして、余計に鳩を愛すことは到底無さそうだ。そんなわけで鳩は嫌い。平和ってあたりがまた嫌だ。あーなんだかシズちゃん?みたいなんだな、睨みやがっていつだって、そうだあいつはまるで鳩。胸を膨らましてけたたましく鳴いて追い掛けてさあ。
そう考えるとなんだか滑稽で、鳩が大嫌いになった。

厚かましい鳥はやっぱりこっちを睨んでて、愛してくれないのを嫌う種族なのか俺が一瞥をくれてやると飛んでいった。鳩に言ってるのかシズちゃんに言ってるのか分からないだろうけど、


「愛を欲しがるなんて迷惑だ」




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