染色


目に痛いったらないなと思う。俺は人工染色剤というものが好きではなかった。何が嬉しくて頭を汚い色に染めたがるのだろう、黒髪であればそのままだっていいだろうにこれだから駄目だよねぇ、と言っていればごちゃごちゃうるせーな、と俺の嫌いな金色に染めた頭が見えた。やっぱり汚い。「きったないな」ああそうかい、とまた煙草をひとつ取り出した彼はの骨はやたらと角張って細いのにごつごつしてるから不釣り合いそのもので、なんだかおかしい

なんで俺が好きではないものと一緒にいるのかと言えば存外答えは単純明快なものであり、また分かり切っていることだった「愛してないし大嫌い」、いざ言葉に直すとやたら簡単で幼稚な文章の出来上がりだった。レンジを使う時みたいにいとも簡単に導かれる返答は味気がなかった。

「ねえ」好きだよ、なんて言わないし愛してるよ実はね、なんてのも言いたくない。だからさ、これで我慢してね
「そのままでいーよ」


意図が伝わるかどうかは後回しにしてそれを聞いた彼はすこし驚いた顔をして、それから俺は変わらねえよ、と小声で呟いて口をひっつけてきた。それに俺も口で答えて、彼の口をただ無心に探し回っていた。案外俺も染まりすぎたようだと危機感を持ったけれどまあ、今は今なので。





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