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誰もがここで終わると思っただろう。

しかし、七瀬さんが立ち上がったと思うと、
「よそ見しながら歩くからよ。」
相変わらず強い口調で七瀬さんは額を気にしながら、響に詰め寄った。

響は困ったような顔をして、
「えっ。ごめん。」
と呟く。

しかしまだ終わらない。
「おでこ怪我したじゃない。」
とギッと響を睨み付けた。
たしかに顔の怪我はモデルには大変なことだろう。

しかし今時、こんな女の子がいるのかと思うくらい恐ろしい性格である。

正直、男子からかなり評判が悪いのもわかる。
女子には嫌われていないらしいがそれも疑ってしまう程である。

そして響もかなりの言われっぷりに、かなり驚いている。

「聞いてるの?!」
七瀬さんはさらに響に詰め寄った。

「ちょっ!」
響がさすがにイライラして、口を開いた瞬間。

「なあ。」
響と七瀬さんとの間に腕が入った。

奏の腕だ。

「なんで謝らないの?」
目を丸くして、素朴な疑問を七瀬さんにぶつける。

なぜかそれを見て潤はほっとしている。

「だってそっちも悪いでしょ。走ってたのはそっちだし。見ていたみんなが響だけが悪いと思ってない。」
「奏?」
響は眉間にシワを寄せながら不思議そうに奏を見つめた。

一方の七瀬さんはきょとんとして奏を見ている。
「急に何よ。」

「額、特に何もなってないよ。」
奏の顔は特に怒っているというわけでもなく、ただいつもの無関心な顔だ。
「響、長谷。行こう。チャイム鳴っちゃうよ。」

奏は3人に背を向けるなりすたすたと行ってしまった。

「待ってよ!」
響は腰を押さえながら走っていく。
「えっ?えっ!」
それを見て潤はキョロキョロしながら、
「じゃ!」
最後に七瀬さんに会釈して潤も去っていった。


ーーーー


「めい!探したよ!」
めいちゃんこと七瀬芽衣は友人の声に振り返った。

「琴実。」
「あれ?めい、どこか痛いの?」
芽衣はずっと下を向いている。

「私、男子なんか大っ嫌い。嘘つきばっかり。」
「知ってる。
めいもなんであんなにイガイガしてるの?」

琴実は唯一の同じ私学の女子中学出身である。
「女子には普通でしょ。
それに。みんながみんな、あいつみたいな男子じゃないよ。」
琴実は静かに呟く。

「わかってる。わかってるけど。」

芽衣はうつむいた。









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