眉を潜めた。 よくもまあこんな男を上が許したものだ。 これは異端者や反逆者と取られてもおかしくないだろうに。 「先生」 初めて聞く授業に、入って来たのはやはり初めて見る上一級を名乗る祓魔師。 にへらと笑う顔から見る限り、どうもお堅い頭ではなさそうだが、なにも考えていなさそうにも見える。 あれが上一級だと思うと誰もの眉間に皺が寄るのではないか。現に自分にも寄っている気がするのだから、そう考えてしまうのも仕方がない。 「……山田くん、だっけ」 奴の身長はかなり高い。けれど恐ろしい印象はなく、傷だらけの癖に懐こそうな笑みを振り撒くものだから、寧ろ親しみやすくやんちゃな印象を与えるのだろう。 「質問?」 彼の話すそれらの知識は確かに宗教雑学と言うだけはあって、エクソシズムには全く関係のないことばかりだった。 彼自身、息抜き科目だと言っていた。 「上一級祓魔師なんだって?」 「そうだね」 「嘘臭い」 「……そうだね」 彼はにこりと笑う。読めない男だ。 「アンタみたいな奴、よく上が置いておこうと思ったな」 「君が思うより、きっとずっと優秀なんだよ」 会話が途切れ、今日は聖書使わなかったなあだなんて呟く彼は、常ににこにこと笑顔でいるようだった。 「他になにか質問は?」 「……ない」 「そう、じゃあ」 ぞわりと、全身の毛が逆立った気がした。 彼の笑顔は変わらない。 「また今度俺とゆっくり話でもしようよ」 ねっ、なんて可愛く笑ったつもりなんだろう。 フードのなかで、いつもより深く眉間に皺を刻む。 気に入らない。素直にそう思った。 ← |