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※男主人公

「しえみちゃん」

きらきらした笑顔で名前を呼ばれて、ぼんやりとした頭がぱっと素早く活動を始める。
タオルを頭に巻いて庭の世話をするお兄さんは、私の家に下宿している大学生だ。
爽やかできらきらした笑顔はお兄さんの魅力の一つで、もちろん、優しいところとか、とても素敵な声をしているとか、鍛えられた筋肉とか、言い出したらきりが無いくらいに素敵なところがたくさんある。
私はさっと髪を直した。寝起きの姿を見られるのは毎日だから仕方がないけれど、それでも、少しでもだらしない姿は見せたくないのだ。

「あ、お、おお、おはようございますっ」

お兄さんは、毎日朝早く起きて朝ご飯に呼ばれるまで、庭で植物の世話をしてくれている。それはとても簡単な、短時間で終わる作業だったけれど、私とお母さん二人でやっていた時より、ずっとずっと楽になったのだ。ふふ、と自然と顔が緩む。

「機嫌が良いね」

土で汚れた白い軍手を片方外して、私の頭をふわりと撫でた。顔に熱が集まって、それを隠すために両手を頬に宛てる。視線を地面に落とした。そうしながら、大きくてごつごつとした手の感触を忘れまいと、触れる皮膚に意識が集中する。
しばらくしてお兄さんの手が離れた。残念に思いながら、顔を上げようとして、すっと頬に張り付いていた両手を剥がされた。びくりと体が揺れる。

「俺の可愛いお姫様」

弾かれたように顔を上げれば、目の前にはお兄さんの顔。目線を合わせるためにしゃがんだお兄さんは、それでも私が見下ろす形になってしまって、本当に憧れたお姫様にでもなった気分になる。

「おはよう」

彼はふわりと笑って、両手をきゅっと握った。