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※女装

少々短い濡れ羽烏の黒い髪に、きりりとした眉。そして母譲りのその美しい凜とした表情は、美しいの一言に尽きる。
鮮やかだが上品な着物に身を包み、薄く施された化粧が更にその美しさを引き立てる。まさに若女将と呼ぶに相応しい。

「別嬪にならはって」
「……おおきに」

しかし少し残念なのは体格であろうか。広めの肩幅にしっかりとした肉付き。あとはピアスホールさえなければ完璧だったのに。

「しゃあないやろ、少しは我慢せえ」

一番我慢しとんのは俺や。
不満げに呟く彼の眉間には皺。目の前の若女将は悩ましげに息を吐く、とは到底表現出来ない男らしさを滲み出す彼に、自分の眉間にも皺が寄った。

「竜士、胡座やのうて正座せえ。ため息つくときは頬に手え当て。眉間に皺寄ってんで、せっかくの別嬪さんが勿体ない思わんの」
「ここまでやったったんや、ええやんけ」
「良うない。私は勝呂竜子を抱くんや!」
「お、お前そないなこと考えとったんか!」
「そうや! わかったら大人しゅうせんかい! まだ何もしとらん!」
「せんでええ!」

勢いよく立ち上がる彼は、上品さのかけらもない粗暴さで、あなたの母はとても美しいのにと愚痴らずにはいられない。口には出さないが。

「女の子と二人きりやとむらむらするやんか……なあ竜子……」
「止めんか」

腕が彼の無い胸に伸びるが、思い切り叩かれて舌打ちを零す。

「なんでも言うこと聞いてくれる言うたくせに!」
「お前、それとこれとは別やわからんのか!?」

声を荒げて反論する彼は、やはり上品のかけらもなく、約束の言葉も跳ね退けた。
というのも、奴が私の貸してやったヘアピンを破壊したのが事の始まりだ。別段高くもなければ気に入りというわけでもなかったのだが、奴が何やら酷く焦っていたために、これは良い機会だと半ば強引に取り付けた約束がこれである。
義理堅く律儀な、目の前の逞しい若女将……勝呂竜士は、こうして私の言いなりとなっているのだった。
うむ、しかし良い出来だ。我ながら感心する。あの素材でここまで化けるのだ。将来が楽しみである。

「ならな竜子……どうぞ僕と街中デートしてください」

してくれなきゃはんなり京都娘をナンパしたる。するぞ。
そう言ってやれば、ぎゅっと彼の眉間にまた深い皺が刻まれる。視線が外に出るのかと恨めしげに言っている。
彼が女装してくれただけでも儲けものだが、それだけでは勿体ない。それに、奴は今は私の言いなりである。
ふうと彼の口からため息が漏れた。流石に紅は引けずじまいで、かわりにリップを代用したが、その唇はふっくらしていてみずみずしい。
それに、だ。
私が指導した通りにため息はつかなかったが、立ったままだとまた違う趣を醸し出す。
ああ、やばいな。竜士かわいい。

「竜士」


リップを塗った唇でほら、