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秩序を司る女神というものがある。
裁判所に置かれている、天秤と剣を持つ女神像がそれだ。
ギリシャ神話が出展の、法と掟の女神、テミス。
意外とギリシャ神話ってのは生活に大きく入り込んでいて、特に知識分野では有名だ。医学ならアスクレピオス、商業ならヘルメスといった具合だ。ギリシャ神話をよく知らない人間でも、アポロンとアルテミスが太陽と月であるとか、アフロディーテが美を司るとか、アレスとアテナが戦を司るとか、ポセイドンが海の、ハデスが冥界の神で、ゼウスが浮気性の全知全能の神、ヘラクレスが半神半人の英雄で、とふんわりそういうことは知っているだろうと思う。絵画だって有名なものは多いし、彫刻もギリシャ神話の題材が多い。サモトラケのニケ、首も腕もない勝利の女神は特に有名どころであろう。
海外の救急車にプリントされている大きな星のマーク、杖に蛇が巻きついたマークもギリシャ神話由来だ。
日本にも勿論外国の文化は根付いていて、例えば十三階段なんかはやはり海外の文化だろうと思う。
十三階段。処刑台へ登るために踏む階段の数。
日本には死刑制度というものがある。基準ははっきり覚えていないけれど、過去の判例を参考にしている。基本は二人以上の殺しを行なった者から適応の対象だ。けれど、二人殺しただけで死刑を言い渡される事はほとんどない。様々な要素が絡むからだ。
また裁判官にも死という刑罰を与えることに大きなストレスがかかる。当たり前だ。穿った見方をすれば、それは間接的な殺人に他ならない。死刑判決が出る事が少ないのはその兼ね合いもあるはずだ。
人権派や世界情勢は、この死刑制度を廃止させたがっているけれど、こと、この日本ではまだまだ難しかろうと思う。文化、死生観、土地、感情。どれを取っても、廃止して良かったと思える未来も、言える人間は少なかろう。江戸時代までは仇討ちも可能だった日本である。
ま、喜ぶのは冤罪被害者だけであろう。
冤罪。読んで字の如く。謂れのない罪だ。これがあるから死刑の求刑は少ない。なにせ刑を執行してしまったら、その人の無罪が後に分かったとしても、もうどうにもできないのだ。取り返しがつかない。だから困る。過去に実際にあったことだから余計に踏ん切りもつかないわけで。死刑には他にも色々と問題もあるが、今は冤罪の話だ。
冤罪が起こるのはひとえに、捜査も裁判も全て人が行なっているからである。
冤罪が全く無くなるたしたら、それは神が裁判をするときだけだろう。
首に死がかけられる。
死刑を言い渡された囚人達も、刑が執行されるまではいたって普通の囚人だ。
古い順から刑が執行されるわけではなく、無作為に選ばれた死刑囚が処刑台に立つ事になる。
昨日となりにいたやつが、今日居ないなんてことは往々にしてあることで。
いつ来るかわからない死に怯え、恐怖し、狂っていく人間も多いと聞く。
自分は比較的執行が早かったように思う。
極めて残虐で、心身虚脱は認められず、また反省の色もなく、累犯性が高い。そう言われた。全くその通りだと思う。生きていれば、どうせまた同じことをするだろう。

ハレルヤ!

テミスの剣は降り下ろされた。
はずだった。



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