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04

駅前の交番が目の前にある。あとはこの歩道を渡るだけ。江戸川少年とはあんまり話をしなかった、というよりは話すほど距離がなかったというべきかな。しまった、て顔をして居たから、本当に迷子じゃなかったんだろうし。でもじゃあなんで声を掛けられたのか、俺って神造魔性の美少年だからなぁ、もしかしたら声を掛けられなきゃいられなかったのかもしれん。2次元の暴力的可愛さを誇る彼が?わからない。人間はわからないのだ。あ、あの交番のおまわりさんがこっちに気づいた。おまわりさん、迷子でーす。手を振ってみれば、ニコッと笑顔を返してくれる。ヘヘッ、美少年の無邪気な態度は癒しになるだろ?存分に癒されてくれよな!と、笑顔を振りまいていたら、交番の中から出てきた男に目を見張る。みっちゃんだ。ええ、そんなところにいるの?さっき信号が変わったばっかりなんだろう、車の流れが変わった。路肩に停まっていたワゴンがエンジンを掛ける。
俺はみっちゃんに大きく手を振って、存在をアピールする。今そっちに行くからね、と。

「みっちゃーん!迷子連れて、」

来た。ワゴンが目の前を遮ってしまった。ええ、みっちゃん俺に気づいたかな。ワゴンのドアが開いて、ぬっと腕が、あ、ヤバ。
体は子供だ。一人は神造、一人は人造の美少年。中学生って言ってみても、大人からすれば可愛い小さな子どもであって、隣の子どもは小学生、の平均よりも小さな体をしているのだ。複数人による大人の腕が、力任せにワゴンへと引き込めば、抵抗虚しくされるがままになるしかない。俺が今、刀剣男士だったらきっと。無い物ねだりをしてみるけれど、まあ現実逃避って言っていい。だけどそれでも、人生3年生の俺だ。少しくらいの抵抗はできる。腕の魔物から、たった一人を遠ざけるくらいは訳ない。はずです。複数の腕が体に絡む、繋いでいた手を離して、縋り付こうとする手を振り解いた。お前お前こっちに来ようとするんじゃねえ、助けてやるんだから。だってやっぱりなんとかしなきゃいけないな、とは思うじゃん、江戸川少年の今後が心配だからさぁ。主人公がバンの中でレイプとかシャレにならないじゃんね。すまん、と心の中で謝って、小さな体を軽く蹴った。良し、男たちのリーチの外に出た!
バンッ、ドアが閉まる音、窓がカーテンか何かで仕切られて薄暗い上に、誘拐犯達の顔は目出し帽で判別がつかない。どこかに売り飛ばされるなら良いけど、本当にこの中で行為に及ばれたらどうしよっかな。どちらにせよ、俺のお尻は手遅れだぞ。いいなおめーら。
それからもう一つ、この車が止まったら最後だぞ。みっちゃんが鬼の形相で追っかけて来てるぞ、これ。俺の携帯ひっきりなしに振動してるんだもん。気付いてくれたみたいで良かった。交番の前のおまわりさんのおかげかもしれない。その場にいたからなにがあったのか詳しくわからないんだろうけども。あ、江戸川少年も居たな。じゃあ大丈夫だろ。
それにしても車のエンジン音とかで、振動の音が聞こえてないのはラッキーだ。

「なあ、アンタらは金が欲しい人間か?」
「ああ?なんだこのガキ、お前今どういう状況かわかってんだろうな」

いやでも俺を誘拐するんだから身代金目当てとかではないのかな。そういうのって大体事前に調べて目星つけるもんだと思うんだけどな。あーでも五条グループの子どもだと思われてる可能性もなきにしもあらず、かな。鶴さんと時々行動したりしてるもんね、俺。

「俺、孤児だからさ。金は期待しねー方がいいぜ」

人身売買って言うなら別だけど。俺は高値で売れると思うなあ。血統書はないけど、結構造形には自信がある。顔はもちろん、しっかり運動もしているし、ある程度筋肉も付けてるんだ。元刀剣男士として、あの時と同じくらいとはいかないまでも、しっかり動けるように、ちゃんとしてるんだからな。

「……それとも、俺の身体をご所望かい?」



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