刀剣 | ナノ
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▼ 02

「包丁藤四郎だぞ! 好きなものはお菓子と人妻! よろしくー!」

口から勝手に言葉が滑りでやがった。なんなんだ。俺は別に人妻が好きなんじゃないからな。いや人妻が嫌いなわけじゃない。違う。俺が好きなのは処女だ。いいな。処女が好きなんだ。人妻は悪くない。処女であるなら人妻であっても問題はない。問題ない。ただ、人妻である時点で処女である確率が低いのが問題なだけ。つまり正確に言うなら、好きなものはお菓子と処女の人妻。いや別に特にお菓子が好きってわけでもねーけど。食べ物だったらどっちかというと酒のつまみの方が好きだな。酒は飲めないんだけども。つまみ、美味いよな。あの濃い味付けが中々。しっかしこの口はよく回る。俺の口はいつハンドスピナーになった?
とりあえず俺の兄貴だと名乗るこのよく分からん、人間にしては派手過ぎる髪の色に染めた男とやっぱり派手な髪の色をした巨人に手を引かれ彼らを雇っているらしい男の元へ戻ることになった。
俺の兄貴はもうちょっとこう、別の方向で派手だったはずなんだけど、いつの間に方向転換したんだろうか。もう着ないのか、あの特攻服。改造したうるさ過ぎるバイクにも乗らないのか?急に軍服っぽいのを着だした兄貴に震えが止まらねーな。軍人ブーム到来か。いや奴は兄貴じゃねーんだけど。別人だもんな。顔が。兄貴はそんな派手な蛍光水色の髪の毛にしても似合っちまうエグいイケメンじゃねーんだわ。禿げても知らねえぞって言ってやらないといけない、色褪せたおかしな茶金の色に髪を染めた、リーゼントがちょっと似合ってない日本人然とした顔の男なんだ。わかるだろ。
それにしても俺の研ぎ澄まされた直感が告げる。この仮の兄貴、の隣で喋っている大きな背丈の第三の性を獲得してるっぽいあの人は男性で処女でノー人妻だ。なんかよく分からんが、ホーチョートーシローという人物になった俺は、俺の好みを一目で判断できる能力が備わったっぽい。すげーな、俺。俺は処女が好きだが、ホーチョーは人妻が好き。だからどちらも判断できる。あとは男性か女性か。これは大事なことだ。男を抱く趣味はねえ。
そこで気付いたんだが、男性で処女かどうかがわかってしまうのは辛くねーか?
誰がって、俺が。
うーん、だいぶ気持ちが落ち込んできた。処女の綺麗なねーちゃんにあたふたされながら慰められてえ。
処女は良い。男を知らない。それだけで最高だ。だってそうじゃねえか?今から抱くって彼女がもし非処女だったら気持ち悪いだろ。誰だよ俺の前に彼女を抱いた野郎は。彼女の中に別の見ず知らずの男のチン○が出入りしたんだぞ?許せるか?許せないね。
愛があればとかそういう次元じゃねえんだな。俺はラオウじゃねーんだ。すまねえな。
処女という清潔感、貞淑さ、初さ。処女は全てが詰まっている。最高だね。良い。
やっぱさ、純潔をね、俺だけにして捧げて欲しいわけだよ……いや、でもやっぱりそうすると処女じゃなくなっちまうからな……ダメだ……一生処女でいて欲しい……でも女の子はさあ……幸せになって欲しいよな……でもやっぱり処女でいて欲しいんだよ……聖書の聖母マリアを見てくれ……処女で産経婦だ……最高かよ……正直なところ人妻の良さってのは、他人の嫁だからこその愛っつーか、自分に向いてない愛情に対する何かだと思うんだが、つまるところ己の子どもではない俺に対する無条件の優しさの暴力というものが欲しいのがこの俺ホーチョートーシローであって、俺の神聖なる処女の清らかさは無条件で素晴らしいと思う気持ちは俺のもんである。ついでに言っちまうと産経婦の良さはやっぱ子どもを産んだという事実、子どもの扱いが上手い、または子育ての経験からくる母性愛を感じたいという思いに起因するものであるから、この俺は、まさしく聖母こそが至高の存在であるという結論に至るわけだ。
清らかなるおとめ、最高です。
ところで今から向かうところに処女で人妻の産経婦は居る?


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