刀剣 | ナノ
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▼ 01

「ウワアアアアアアアアアアアアアア!!!鶴丸国永だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

驚かれた。
それに何より自分でもちょっと驚いている。
目を覚ましたらじぶんはつるまるくになが、という人物になっていたのだから驚かないわけがない。夢の中かな、と思わないこともないけれど、夢の中で夢の中だと認識したことがないので、夢の中ではない気もする。が、そういう夢なのかもしれない。
何せ自分、先程交通事故を起こしたばかりなのだ。
親ももう居ないし、独り身だから大丈夫だとは思うが、果たしてあのあとどうなったのやら。大層派手な事故だったから、何人か重体のものも出たろうが、死亡者がでてないといい。あと自分が過失致死罪に問われてなければなお良い。被疑者死亡で不起訴とか書類送検、なんてことがあるのかもしれない。起訴させるされないに関わらず、罪を背負わない方がいいに決まっているのだ。
いやしかし、高速道路での玉突き事故は怖いな。今後高速道路で走るということになったら気をつけよう。目の前がトラックなら車間距離を開ける、大事。追突したくなければスピードを落とす。これも大事。俺は追突された方だがな。それで俺は、死んだということでいいのだろうか? 病院で意識不明の重体となって今、こんな夢を見ているのだろうか。
兎も角、つるまるくになが、が今回の俺の名前らしいので、それらしく振る舞った方がいいのだろう。くになが、くにながか。中々渋い名前だ。であればやはり渋くカッコ良さげにした方がいいか。いやでも見目も重要だよな。さっと己の体を検分したところ、細身でゴテゴテしたよく分からない和服を着ているから、病弱な男なのかもしれん。ただ、今は体に何か違和感があるわけではないので、ある程度様子を見ながら動いた方が良かろう。
どうやら俺の他にもう一人新入りがいるようなので、二人一緒に家の中を紹介してくれるようだ。
もしかしてここは……あれかな。少年漫画で読んだ……死後の第二の世界的なやつかな……ならばこの体にも説明がつく、ような気もする。
仮に死んですぐ別人になったとしよう。それでいて誰もが今の俺を初対面であるかのように、それが当たり前であるように接してくれる。
俺を見て叫んだあの男は俺を知っている風だったけども。それでも知り合いというよりは、有名人がなぜか玄関に立っていた、みたいな反応だった気もするので、きっとつるまるくにながをよく知らない。好都合である。存在するつるまるくにながを演じなくても多分大丈夫だ。ある程度の前情報があれば別なのだが、何もないからな。知り合いらしき人物に出会ったら記憶がないということで乗り切ろう。うむ。よし!
ところでもう一人というのは?


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