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彼は話を聞くなり二つ返事を寄越した。そして見るからに愉快そうに、さて最初はなにをしようかと尋ねてきたのだった。

「……あそこまで毛嫌いする理由がわかればなあ」
『人間の虫嫌いと同じ原理だろう。生理的に受け付けない』
「……」

俺達は虫か。
叫びたいのをぐっと堪えて、ぐっと押し黙る。相手は金属生命体、人間が彼らからどう見えているかなどわかるはずがない。だが、人間だって動物や同じ種の人間を嫌悪することもあるのだ、その気持ちはわからないわけでもなかった。
ただはっきりと、自分が友好的に接しようとしている相手から、生理的嫌悪を抱いていると言われたら、どうにも答えようがない。複雑な心境だった。

『そうだな、生理的嫌悪は対象の知識が浅い時にも現れる現象だ。馴らしてみるのはどうだね』
「……どうやってだ?」

ふふんと目の前の黄緑は得意げな表情を作り、それはだな、と今から行われるらしい"治療法"を話しはじめた。



『ウワアアアアアアアアアア!!!』

格納庫内に叫び声が響いた。次いで聞こえるのは連続した銃声。発砲した当人はわたわたと体から何かを払う仕種をしながら、怒りの声をぶち撒けた。

『おい、止めろ! クソッ、ラチェット!』

くつくつと笑い声を漏らす黄緑色を睨み、それでも仲間だからか銃口を向けることはせずに、彼の視界から出ようと左右をどたどたと走り回る。閉じられた格納庫のシャッターを突き破らないのは、彼のなけなしの良心なのだ。
若干心が痛む。

『ホログラムだ。本物じゃあない』
『本物もくそもあるか! 人間の形をしてりゃ人間だ! ああ畜生、登るな!』

人間の形を模した複数のホログラムが、時折ノイズを走らせながら、器用に彼に群がりよじ登っていく。ホログラムの発信源は、勿論それを愉快そうに眺める軍医であり、そのきっかけを作ったのは紛れも無く、この自分であった。

『おい、おい、増やすな!』

ホログラムだとわかっているからか、人間に容赦なく発砲する人間嫌いの彼と、まだ増えていく人間に軽い恐怖を覚えながら、すまんと胸中で呟いた。
すまんTF。だが、これはお前達のためでもあるんだ。

バアン、と突如轟音が響く。何事だと音の発生源に視線をやれば、シャッターを突き破ってきたらしいシルバーが立っていた。
それを認識した人間嫌いの彼は天の救いだとばかりに、戦闘機へと姿を変えて、暗くなりはじめた空へ飛び出して行った。

『救難信号出てたから来たんだけど、なにやってたんだ?』
『ああ、サイドスワイプ。ちょうど良い、手伝ってくれ』