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- ナノ -
 
彼は極度の人間嫌いだった。
故にビークルモードの時に人を乗せることはなく、また人間の形を模したホログラムを、運転席に映すことでさえも嫌がっているのだ。
そんな彼が一般道を走るのだから、無人自動車の噂は尾鰭をつけて瞬く間に広がって行くのである。

今現在、金属生命体らは国家の機密事項であり、一般にはまだ知られてはいけないものだ。そのために無人走行を直ちに止めさせなければならず、妥協案を幾つか提案してはいるのだが、

『断る』

彼は断固としてそれを受け入れてはくれなかった。他のオートボットと違って非友好的な彼を、どうやって納得させたものかと頭を悩ませる。

「そんなこと言わずに、頼む」

目の前の巨人は腕を組み、不機嫌だと言わんばかりにぎゅるんと音を鳴らした。その青い瞳は不服の色を溶かし込んで、ぎろりとこちらを睨んでいる。

『人間を乗せるなんて御免だ』

彼はそう吐き捨てて、ガシャンと荒々しく音を立てながら、体を車へと組み替えた。眼下に佇む日本製のキャンピングカーが、ぶおんとエンジン音を響かせる。

「おい、待て、TF! 話はまだ」
『基地の外に出なきゃいいんだろうが』
「そういう問題じゃ……」

もう話は終わったとばかりに方向転換、直ぐに格納庫から出て行ってしまった。
頭を掻く。こういう手詰まりの時は、他人の意見も欲しいところだ。
しかし相手は人ではなく金属生命体。ならば彼らの軍医に相談するか、と通信機を手に取った。