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(元NEST隊員、男性)


ああ、彼は今日、頗る機嫌が悪いのだなと判断した。
大きな金属の足に勢いよく蹴られて息が詰まる。
それでも骨が折れたような感覚はないのだから、手加減する余裕はあるということで、なにかに失敗でもしたのだろう。

『くそっ、オートボットどもめ……!』

体を起こして彼を見上げた。赤い瞳に尖ったフォルム、見慣れてしまった特徴的なそれと、見なくなって久しい記憶の彼らを比較する。彼らは機嫌が悪くても手は上げなかったな、と思いながら。
息を吸い込む。ひゅうっと渇いた空気が喉を引っ掻き、咳込んだ。じろりと赤い目がこちらを向く。

『……あのチビ将校、まだてめえの事喚いてたぜ』

ハッと小馬鹿にしたような、空気を含んだ笑い声。一体どういった構造でそんな声を出しているのか。
激しく咳込んだせいか胸に鈍い痛みが走り、じわりと涙が滲む。

『てめえは俺のもんだ、あいつらには渡さねえ』

腹を蹴られて壁に背を打つ。ガン、と次いで頭も打ち付け、激痛に身をよじった。ぼろりと涙が落ちる。

『それでも奴らが迎えが来たら、向こうに戻るか、虫けら?』

苦痛に声が出せないでいるというのに、そういった質問を投げて寄越すのはどうかと思う。
科学者のくせにそういうのもわからないというのか。いや、全く関係ないのだけれど。

「……た、ぶん」

帰らないと思う。途切れ途切れの言葉を辛抱強く聞いていた彼は驚いて笑い、どうしてかと尋ねてきた。
確かにジャズの相棒は純粋に楽しかったが、今の自分はもう彼の相棒ではない。

「俺は、」

目の前の彼に焼き付けられた背にあるインシグニアはオートボットのものではなく、鋭角的な印象を与えるディセプティコンのものだ。つまり自分は、もうオートボットの側ではなく。

「あんたのもんだ、スタースクリーム」

にやりと、目の前の彼は笑った。