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- ナノ -
(レスキュー車、男性)


戦場を走る赤いレスキュー車の運転席には誰も座っていなかった。となれば勿論、彼ら金属生命体以外他になく、己の知らぬ姿をしているのだから、あれは正義の装甲を被った欺瞞の民なのだろう。
堂々たる態度のその赤い姿は、スピードを徐々に上げながら戦場を横切り、ドガン、とシルバーのボディを持つ金属の巨人にその車体を当てた。スピードはそのままに、ドリフトしながらのUターンを華麗に決め、銀色にまたもや突っ込んで、やはり堂々と来た道を辿って逃走する。なんと態度のでかい轢き逃げだろうか。

『てめえ!』

地に這うその金属生命体が怒るのも無理はなく、ぎいぎいと喚き立てる。
赤いレスキュー車が大きな音を出しながら急ブレーキをかけ、次には車体の形が複雑に変形し始める。赤い装甲を身に纏った、大きな金属の人に姿を変えたそれは、くるりと体の向きを変えて銀色に右腕の砲頭を向けた。

『吹っ飛ばしてやろうか』

キュウンと砲頭が光を帯び、危ないと銀の巨人の名を叫ぶ。しかし赤と銀の双方は動かず、赤色の彼は青いカメラアイを銀色に向けたまま、容赦なくそれを撃ち放った。ドウン、大音量と共に光は銀色の巨人の頭を包み、至近距離であったために避けられなかったのだろう、先程まであった頭は三分の一が吹き飛んでいた。

『……威力が落ちたな』

それを見て残念だとばかりに唸る赤い巨人は、ガチャンと倒れた銀色の巨人にアイセンサーを合わせる。数秒じっとした後に、彼の腹の装甲を剥いで内部機関を掴んで引きちぎった。びくりと跳ねる銀色の巨体はしかし悲鳴を上げることはなく、自分ははっとしてその赤に銃口を向ける。赤い巨人はそれに気付いてカメラアイをこちらを向けたが、やがて取るに足らないと判断したのだろう、横たわる銀に視線を戻した。
再度赤は銀の腹に手を入れて、掴んだコードを力任せに引き抜いていく。何度かそれを繰り返し、漸く満足げに排気して、それは立ち上がりくるりと銀に背を向けた。ガシャン、ガシャンと音をたてながら巨人はレスキュー車へと姿を戻し、堂々と戦場を横切って行った。

『サイドスワイプ!』

入れ違いで現れた黄緑のハマーと黒のトップキックは、倒れるぼろぼろの銀色をアイセンサーに捉えて人型に姿を変える。黄緑は駆け寄りさっと全身をスキャンにかけ、まだ間に合うぞと叫んだ。運べ、と黒の巨人に怒号に近い大声を投げる。黒が銀色を抱え上げ、こちらに青い目を向けた。
先程の赤い巨人が脳裏を掠める。

『いったい何があった?』