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(プリテンダー、男性)


まぐまぐと与えられたであろう食事を頬張る少年の姿を目にした男は、額に手を当て溜め息をついた。

「おいおい、冗談だろ……」

仮にも機密事項だらけの軍事基地、一般人は勿論、血族を連れて来るのは禁止事項であり、またそんなことを言わずとも周知の事実のはずである。
辺りを見回して見るが、その少年の親らしい人物は見当たらず、首を傾げた。小さな子供の食事に親がついていないのはどういった事情なのか。基地に連れ込みあまつさえ放って置くとは。
机や手と口回りを汚しながらそれを無心に貪っていた少年がちらとこちらに目を向ける。赤茶色の瞳がきらりと赤く輝いた気がした。

「……君はどこから来た? お父さんかお母さんは」

少年の向かいに腰掛けて問えば、少年はふもふもと空気ばかりの音を漏らす。

「ああ、口の中のものが全部無くなってからで良いから」

少年はこくんと頷き口腔内のものをもぐもぐと咀嚼する。ケチャップとソースでべたべたになったそれを拭うこともしないまま、満足そうに味わい、ごくりと膨れた頬のものまでも全てを飲み込み唇を舐めた。

「もう良いか?」

少年はやはりこくりと頷きにこりと笑む。

「ここには誰と来たんだ?」
『私だ、虫ケラ』
「うわあっ」
「おかえりなさい、ドクター」

ひょいと机の上に現れた小さなエイリアンに男は驚き、がたんと椅子を大きく鳴らす。対する少年は嬉しそうに彼を呼んだ。

『漸くお前のリペアが出来る』

それはチチチとその六本足を稼動させ機械音を鳴らした。
光学顕微鏡に擬態する、まさにエイリアンと呼ぶに相応しい形をした彼は、ディセプティコンの衛生兵だ。それが子供に向かって口にした言葉は、NEST基地に待機するオートボット達がよく使う言葉であり、つまりは。

「まさか、その子供……」
『助手だ』

この少年もまた金属生命体であり、ディセプティコンなのである。
少年が言うには爆撃を受けてフレームの半分を焼失させてしまい、残りの体で生命維持をしているとのこと。そうして小さくなってしまった体のために、子供姿を再スキャンしたらしい。

「ところでドクター、スペアパーツ等は足りないはずでは?」
『アア、丁度良く転がっていた黒いオートボットから失敬した』

成る程と少年は頷き、食事をすぐに終えますねとまだ半分残っていたハンバーガーにかじりついた。