◎隻脚の男 事故 これなあに?とミケランジェロが手に取った物を見て息が詰まった。マット加工の施された金属の黒い拳銃。銃身に弾は入っていないが、マガジンにはたっぷりと残っている。装填だけはしないでくれ、と思わずにはいられない。 しかしその願いも彼の好奇心には勝てなかった。カシャンと軽い音を立てて弾の装填が完了する。彼は銃身を覗き込み、くるりと指で銃を回す。安全装置をかちりと外し、引き金に指をかけた。どくりと心臓がはねる。 「ダメだ、ミケランジェロ!」 咄嗟に彼の腕を引いて拳銃を奪おうとするが、反動で彼の指が引き金を引き切ってしまった。ドンと地下には似合わない大きな音が響き、ワアッとミケランジェロは尻餅をつく。その手に拳銃はもうない。ホッと息を吐き、次に襲い来る激痛に呻いた。脇腹に当たる銃口の熱が傷を焼く。奪った拳銃からマガジンを抜き、スライドを引く。吐き出された薬莢がコンクリートを叩き、ころころと地面を転がった。 痛む脇腹を庇いながら背をさする。あると思っていた穴が空いていない。接射なのに貫通してないのだ。火薬が悪かったのか、手入れ不足かと銃のことに思考が逸れる。じわりと服にぬるいものが染みるのを感じる。 ばたばたと目の前で転がる大きな亀の弟に、濡れていない方の手を差し出す。 「……怪我はないか、ミケランジェロ」 「アリガト!」 差し出された手を掴み、にっこりと弟が笑う。この痛みが、彼の笑顔をもう少しで奪う物だったのだ。全て自分の失態だ。これも自業自得と言えるだろう。 「怪我は無いよぉ、だいじょーぶ!でもおっどろいた〜!先に言っといてよね!」 「言う前に取り上げたろう」 そうだっけ?と舌を出してゴメンネとあまり反省のない顔で謝られる。これは危ない物なんだ、と詳しく説明をしてやる元気が今はない。予想以上に脇腹が痛む。 「あれは酷く危ないものだ、今度から気を付けてくれ」 ハーイ、とミケランジェロは背を向けた。気付かれていないだけマシなのか、それとも気付かないふりをしているのか。吹き出る汗に、止まらない血。動脈でもやったのか、と頭だけは酷く冷静だ。とにかくまずは弾を取り出さなければ。ドナテロの部屋へ行けば何か、有る、はず。 「おい、何か凄い音がしたけどどうした?」 「あっレオ〜!」 ひょこっと道場の方から顔を出したのは四兄弟の長男、レオナルド。たったっと軽快にそちらへ向かうミケランジェロの背を見ていると、ぐらりと視界が揺れてしまった。 まずい、と思う時には遅く、自分は地面に膝を着く。 ぱたぱたと血が滴り落ちた。 「兄さん!」 09/26 18:21 mae top tugi |