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- ナノ -


◎隻脚の男


レオナルドによる隻脚の男

その人は自分のことをホームレスと言っていた。ホームレス。家の無い人。雨風や寒暖を凌ぐために地下道を寝ぐらにし、そこから日々の金を稼ぐ。その日暮らしではあるけれど、幾らか気楽であるとも言った。他にも彼は国に命を捧げた軍人であったとか、過去に何度も海外へ行って戦場を駆け抜けたとか、俺達には全く想像のつかない、大きな世界の話をする。国を守るために戦っていたのに、どうして家が無いのかと末弟が疑問をぶつける。その人は少しだけ困った顔をしたけれど、姿勢を崩して右足を出して、ズボンの裾をそっとめくった。そこに有るはずだとばかり思っていた人間の脚はなくて、弱い光源を浴びて光る金属がそこにあった。
人間じゃない、と次男が立ち上がる。武器は先生に取り上げられていたけれど、いつでも飛びかかれるように、自分もすっと身構える。
落ち着きなさいと先生だけは冷静だった。どうして、と弟達から不満が上がる。好戦的な次男は直ぐにでも飛びかかりそうだった。
そういえば彼に、一番初めに攻撃したのも次男だった。
目の前の、右足が金属の彼はさみしそうに笑う。戦争で、多くの友人と共に失ったものだ、と。これのせいで国を守る仕事ができなくなったのだとも言った。なるほど確かに、脚がなければ戦えない。後で詳しく聞いたけれど、あれは義足というもので、失った部分を補う道具なのだそうだ。彼の身体は肌にたくさんの模様がついていたけれど、触らせてもらった限りでは、どう感じても普通の生き物だった。
簡単に纏めると、仕事がなくなったから家を維持するお金がなくなり、ホームレスになった、ということらしい。
なるほど、と先生は暫く口を閉じ、あの長い髭を撫でた。そして次に発した言葉は、貴方を我が家族に迎えたいが如何だろうか、ということだった。
先生が何を考えているのか俺達にはわからない。けれど目の前に座っていた隻脚の男が、ありがとうございます、と震えた声で静かに頭を下げたのを見たら、抗議の言葉は音にならずに散ってしまった。


09/19 15:20


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