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◎×創作


目の前の男は殊勝に首を垂れたが、その目はまだ疑いの色が濃く残っていた。それは、自分の横に座る腹心にも言える事であり、彼の言葉は確かに信用できない。
かの男が仕える主の名を聞いても一向に若としか答えず、何処から来たのかと問えば聞いた事の無い土地、では此処は何処かと言う問いに奥州の米沢と答えれば、ぎっと憎しみの色の混じった目で睨み付けられ、本州の者かと吐き捨てるように呟く。
全く素性の分からない男も、しかし自分の名を明かすには抵抗は無いらしく、葛城と名乗った。氏が、と驚きもしたが、何処かに仕える武士の様であったから、それもまあ当然の事だと思い直す。
「で、その若とやらは、部下を放り出して一体何をしてる?」
その言葉に、男の目がぎらりと光った。言葉を間違えたと気付いた時には遅く、葛城は速い動きで此方に足を叩き込んだ。常人が出せる様な音では無い、風を引き裂き木が割れる音を耳にして、ぞくりと全身が粟立った。
そろりと自分の隣をみれば、床に減り込む葛城の足。すっとそこから引き抜かれた男の素肌は赤く、しかし今しがたついたであろう傷は一つも見つからなかった。
「若が部下を放り出すなど、天地が裂けても有り得ぬ事を申すな」
二度目は無いぞと釘を刺される。ぎらりぎらりと殺意に光る金の瞳に、皮膚はほんのりと紅く色付き、毛は陽光で白く輝いている。何か人ならざる者に見えた。
また腹心や天井裏の忍が動けないのを見ると、余程この男の殺気が強い事を示している。それ程までにこの男が入れ込む主を少し見てみたくなった。



赤鬼葛城さんと政宗公


07/09 16:51


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