第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
×
- ナノ -


◎孫と


ぱちぱちと、意識して瞬きをした。視界の光景は、どうやら現実の様で。
「右目と猿飛も落としたのか」
天女を取り合う蒼紅の主従の姿に、片手で顔を覆った。唸る。
「泰平だな……」
彼女は伊達の天女ではあるが、その身は何度か拐かされた。相手は大抵無名の大名で、そこから彼女は各国を渡り歩き、名だたる武将を落として来た傾国だ。煤竹が言うのだから間違いない。最後まで一線を保っていた彼ら従の物までも誑し込むその手腕に感動すら覚える。これでは自分も落ちそうだ。接触しないで正解だった。
だが、そこまで入れ込む人間が多く居ない事も確かで、例えば間近で彼女を見る梅子や煤竹が落ちないと言うのは不思議だった。彼女のお眼鏡にはかなわなかったのか。上杉のくノ一ですら、彼女にお熱であると言うではないか。
「煤竹、お前は天女に恋情は無いのか?」
「まさか。この煤竹、若以外に身体も心も捧げるつもりはございません」
「お前のその忠犬ぶり、嫌いではないがな……」
煤竹の子供とか抱いてみたいものだがなあ。
兎にも角にも、落ちる人間の共通点は何か有るのだろうか。彼女の好み? わからん。梅子なら知っているのだろうか。ただ、残念な事に梅子は今、仕事で城の中を駆けずり回っていた。なにせもうすぐ夕餉の刻だ。

祖父上がこの上田に来る事となり、城内は慌ただしかった。自分も今ではすっかり上田の人間の気分だが、躑躅ヶ崎館が本来の住処である。しかし、参った。祖父上の来訪となれば自分は挨拶に目通りせねばならないのだが、祖父上の目的は確実に天女であろうから、拝謁の際に天女と並ぶ恐れがある。彼女の目にはあまり映りたくなかった。だが、仕方がない。
「梅子!」
「はい、只今!」
女中らしさが最近漸く板に付いて来た彼女に、天女の今の様子を聞いた。そわそわしているらしい。そうか。そりゃあ甲斐の虎が会いに来るのだ、緊張しない訳がない。
「忙しいか」
「目が周りそうです」
「梅子、手伝っておくれ!」
「今行きます! 信勝さん、ではまた後で」
「ああ。転ぶなよ」



同郷の梅子ちゃんには比較的優しいとおもう孫は憑依だから


06/14 00:18


mae top tugi