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◎少年忍者


旦那を暗殺しに来た忍びの子どもは、情報収集は苦手な様だったけれど、殺しに掛けては一流だった。無感動に命を毟り取るその行為は、さも当然と、人が息をする様で。どんな命令も表情一つ変えず、許可が無ければ言葉を話さない。
拷問では悲鳴すら上げなかった。一体どんな修行を積んできたのか、何の感情も映さないどろりとした黒い瞳から、彼の心は感じられない。薄ら寒い思いがした。
だから、旦那に言われて里を探った時も、何も出なかったのが恐ろしかった。確かに何の情報も無く、当てもなく探し回ったと言えど、こんな優秀な子どもの忍び、少しくらいは誰かの話に上がっても良いはずだ。
結局何もわからないまま、数日子どもを捕まえていると、彼の師であるという人間がこちらへ堂々と接触しに来たのだが。
僧侶の格好をした壮年の男は、地下牢に繋がれ転がされ、両腕の使えない少年を目にいれた時、ふうと深い溜め息を吐いた。それに反応した少年は、僧侶を視界に入れると素早く居住まいを正す。動かない両腕をそのままに首を垂れると、僧侶は良い、と一言声を出した。
「せんせい」
初めて少年の声を聞いた。掠れ気味ではあったが、高くもなく低くもない、少年らしい柔らかな声。
「申し訳ありません」
覚悟は出来ております。そう少年はまた首を垂れる。
「良いと言っておろう、お前には少々荷が勝ち過ぎる仕事であるとわかっておったわ。生かされているとは思わなんだが」
「ここの城主が私を雇いたいと言っているそうですが」
「ほう。お前をか」
「はい。しかし、両腕が利かぬ私は鉄屑以下だと申したのですが……」
「真田の次男坊は青いと聞いておったが、成る程なあ。お前はどうしたい」
「先生、私は物です」
「……育てた俺が言うのもあれだが、お前は本当に頭が堅いな。良い良い、俺が次男坊と話して決めて来よう」
「先生」
「なんだ」
「両腕が利かぬと何度も申し上げておりますが」
「お前には口があろうが」



片腕ばっさりかけねえな


06/18 20:52


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