「#年下攻め」のBL小説を読む
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◎武田孫


人払いはした。辺りに人の気配は無い。羽織を脱いで、丸めて、噛み付く。腹の底から叫んだ。じわじわと目から涙が溢れて、そのうち何も考えられなくなる。何度、何度助けを求めた事か。
この体の人物は、己を消耗品としか見ていない。人を遠ざけ、交わるのを避ける。そのために人を見下した態度を取る、害虫の様に扱う。全てはこの武田の為の行動であっても、周りはそれを理解は出来ない。自分が何故、彼と同化してしまったのかはわからないが、自分がこの溜めたストレスを解放するまで、この体の元の主は、ずっとそれを溜め込んだまま、心を壊し続けていた。
彼は何を間違ったのだろう。わからないが、今迄彼が血反吐を吐いてまで遣り通してきた事を、自分が覆すわけにはいかなかった。
助けを求めて来た。誰でも良い、理解者が欲しい。理解者じゃなくてもいい、縋れる相手が欲しかった。だが、両親はもう居ない。家臣に醜態を晒すわけにはいかない。忍び達にも、未だ現役の祖父、武田が当主もまたしかりだ。
漸く収まった涙を、強引に拭って、轡がわりの羽織を吐き出す。唾液と涙に塗れた深紅のそれを見ていつもの様に情けなくなる。近くに人の気配が無いのを再度確認して、腫れてしまっただろう両目をそのままに庭へ出た。
鯉の泳ぐ池へと羽織を放り投げる。証拠隠滅というやつだ。鯉が驚いた様に水面を跳ねた。毎回済まないなあ。
空を仰いだ。曇天。丁度いい。軽々と塀に飛び乗って、そのまま城を抜け出した。



現代人にはストレス過多


06/06 22:53


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