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◎凶 没


そろそろ貰い手探さなきゃなんじゃない、そう言われてから数日経った。あの時はそうだな、なんて軽く応えたものの、いざ本人を見ると居心地悪く、その話題を伝える気が萎えていった。どうするかな、と思う。
兄妹親類でもなければ、養い子、と言う関係でもない。言うならばただの同居人。本来なら彼女の婚姻には全くの無関係だ。
同性ならばこうも悩みはしなかっただろう。年齢が近ければもう少し気安く打ち明けられもしただろう。だがそのどれもが違うのだ。年の離れた、友の妹。頭を悩ませる種は、殊の外多かった。
「嫁かァ」
「たいちゃん、嫁さん貰うの?」
頭を悩ませる張本人に顔を覗き込まれて驚いた。違えよ、と答えはするが、その後が続かない。お前の嫁ぎ先の事だよ、と言えたらどれほどに楽か。
「……お前の兄貴達はどうなんだ」
「奥さん?有明兄上はいないよ。阿哲兄上は……今はいないんじゃないかなあ」
「……今は?」
不穏な言葉を聞いた気がした。そういえば、この兄弟の来歴を自分は全く知らなかった。
「阿哲兄上はね、人を斬らないと生きられない性分だから」
奥さんも斬っちゃったんじゃないかな、とさも当然のように答える。
「……流石に阿哲さんもそこまでは……いや……そう言われるとそんな気がしてきた」
「阿哲兄上は、ひとり残らず斬るつもりだったんだよ」
天城阿哲。俺が知る中でも最強に近い剣士の一人だ。
何処にも属さない人斬り。政府だろうが逸刀流だろうが、相対するものすべてを斬り払って、この世の中を渡り歩いている。
人を斬る事が好きだというその人は、誰も敵わない程に強く、きっと今もどこかで人を斬っているのだろう。
「ひとり残らず?」
「そ。淡路も有明兄上も、本当は斬るつもりだったんだって。でもいーっぱい殺した後だったから、まあ弟くらい良いかって考え直したって言ってたよ。凄く騒がしかったのに、寝てるのを見て笑っちゃったって」
天城阿哲は無慈悲な人斬りとして有名な人だ。それが一度の気まぐれとはいえ、弟達を斬らずに残したのは純粋に驚く。


11/14 00:48


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