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◎ですすと、ボツ


EXグレネードNo.2。試験管に似た容器に入っている、BTに有効な投擲武器である。薄い青色の液体だけど、容器が割れて空気に触れると茶色く変色しながら霧散する。因みに、No.0はほぼ透明、No.1はオレンジ色をしている。数字が大きいほど威力も大きいけれど、BTを消滅させるには至らない。けれど、消滅させられなくたって、怯ませたり逃走させたりすることができる優れた武器だ。だから、シェアボックスに入っているのを見かけると有り難く頂戴するようにしている。
BT……普通の人には見ることの出来ない亡霊のような存在の事を言う。大きく分けて三種類居て、そのうち見えないのは一種類だけ。けれどその見えないものが厄介だ。音に反応して此方を探り、手形の足跡を残すそれらは、とある装備を装着する事でしか存在を知ることが出来ない。その装備が無くても見ることが出来るのは、特異体質を持つ者だけ。
視認できなければ、奴らに見つかる。見つかればタールが湧き出し、その中から人型が現れる。これが三種類のうちの二つ目。こいつらから逃れられなければ、最終的に大きな動物型のBTの元に連れて行かれる。これが最後の一種類だ。
これらBTには普通の武器は効かない。EXグレネードも怯ませるだけ。ダメージを与えられるのは、とある人物の血液だけ。その人物こそあの伝説のサム・"ポーター"・ブリッジス。
もちろん一人の男性から採れる血液量なんて少ないから、採取された血液を元に、人工的な増血がなされ、血液グレネードなんていう武器が作られている。今の所、サムの血液しか対抗手段は無い。他の人はまだわからないけれど、まあ彼のしかないのだからダメなんだろう。
ともかく、これはかなりの威力があって、これさえあれば、今までならBTに捕まった時点で生きて帰るのが絶望的だった私達も、生還率が格段に上昇する。というか、生還しなければその地がクレーターになるのだからいまのところ生還率は百パーセント。そもそも捕まらないように私達は動いているわけだけれども。
サム……伝説の配達人と呼ばれる彼は、目下このアメリカ大陸を繋げようとあっちこっち荷物を運びながら奔走している。何度か行き合った事があるし、見かけた事も何度もある。颯爽とリバース・トライクで駆け抜けていく彼を見た時なんかは、あまりの爽やかさに空を仰いだよね。あんなイケメンこの世に存在したんだって。そんな私の自慢はなんとそのサムにいいねを貰い、あまつさえ物々交換をした事です。なんでか知らないけど対BTハンドガンを貰ったんだ。血液を都度抜いて弾をコーティングし、射出するハンドガン。私じゃ使えないよサム。だけどこれはもったいないから時雨で劣化しないようにして持ち歩いている。お守りみたいなもんですわ。私は電磁スタンボムをあげました。その後近くのミュールが一掃されたって連絡が入ったし、国道が復活していたからスタンボムはきっと役に立ったんだろうなと思います。
そんなこんなで、私は今日も元気にアメリカ大陸を横断している。私も無所属ではあるけれど、ちゃんとした配達人だからね。そういえばカイラル通信が繋がったお陰で見つかったっていう、昔のジャパンコミックスのデータをこないだ貰った。タイトルはデーモンスレイヤー、男の子が女の子を抱いている表紙で、どうやらかなり昔のニッポンを描いている作品みたいだった。データはまだ途中までしかなくて、すごく気になる終わり方をしてしまった。打ち切りより酷い。カイラル通信が繋がっても、復元データが見つからない可能性だってあるのに。私は悲しい。
BBが居なくなってしまったのも悲しい。
そう、私は今たった一人で立っている。危ないなんて事は百も承知だ。BBと繋がったオドラデクが使えないだなんて、座礁地帯に入ったらどうすれば良いのだろう。時雨が今降ってないだけましなんだろうけれど。森の中でぽつねんとしているのがまた悲しい。さっきまで国道沿いを歩いていたはずなのに。まさかビーチを渡ってしまったのか。確か、西の方の風力発電所の近くには森があるって聞いたことがあるけれど、西の大陸になんて行ったことがないからわからない。
BB。私の相棒。BTを視認するための装備。自家中毒で泣いていたらと思うと、身につまされる思いだ。
ていうか私、対消滅に巻き込まれたはずなんだよね。帰還者ではない普通の人間だから、今ビーチを歩いていなきゃいけないはずなんだけど。私のビーチは森だったのか? ビーチ。観測できるようになったあの世。ビーチというからには浜のはず。私は異能者になってしまったのか。はわわ。


09/19 16:28


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