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◎現パロ


阿哲くんと万次さんがいっぱい
台詞多、ネタ出し、草稿のようなもの
×××
「お前ら剣はやってんのか?」
「ああ、淡路だけな」
「淡路?」
「……あ?ああ、青の事だよ。あれの本名、天城淡路つってな。逸刀流連れてくのに偽名を使わせてたわけ、調べられたら一発だからな、女ってのがバレるのは良くねェ」
「……青坊って呼んでんの不味くねえか?」
「別に大丈夫だろ。淡路を青なんて呼ぶの、万次さんか逸刀流の奴らだけだし、ちょっとした愛称で通らァな」
「そうかぁ?」
「そうさ。……逸刀流はねェけど、淡路行ってる剣道場、逸刀流ばっかだぜ、行く?」
「行かねえよ!つーかあいつらはそれで良いのか?逸刀流だろ」
「時代と向き合える連中だよあいつらは。天津が右と言や右って奴らも多いしな……マ、未来を捨てるようなバカじゃねェよ、あいつらもよ、俺たちたァ違ェわな」
×××
腕を掴む。袖の中にちらと見えた、見間違いであってくれと思いながら、強引に袖を引き上げる。
無数の切り傷、それも綺麗な傷跡だった。どれもこれもが、一瞬マジックで線を引いたかのように平らかだ。
なるほど、常に長袖を着ているわけである。
「阿哲お前っ」
「いや、その、だから、前にも言っただろう……殺しはしてないが、と……ほら、こう、腕ってのは切りやすくてな? しっかり研いだものですっと切ると、傷も殆ど残らんのだが、これらはちょっとやり過ぎの痕というか」
まるでいたずらが見つかった子どものように、ばつの悪そうな顔で、もごもごと言い訳をする。昔は堂々と人を斬っていた男が、時代か年齢かでこうも変わるものなのか。
「……他にもあるんだろ」
「身体中にある。仕様がない……どうも人を切らねば治まらんらしい」
「……お前らなあ」
「それでも、お前さんが家に居るだけで回数は少なくなってるんだ、人が居るとこうも違う。前まではな、家にブルーシートを敷いていた。いつでも切れるように……汚さんように、だ。お前さんが来るから片付けさせたが。……そんな顔をするな……本当に辛抱効かなくなったらお前さん、ちょいと身体を貸してくれ」
「己を拾ったのはそのためかよ」
「いや、純粋な好意だよ、間違いなく。最初からそのつもりなら、家に連れ込んだ日にお前さんを斬っている。ブルーシートも片付けてはいまい、手足を落として、縛っ、ああ、だめだ、万次さん、ちょいと距離を取ってくれるか、手の届かない所に、今、人が居ると、まずい」
と、と軽く身体を押されて半歩足を後ろへやった。
押した方の阿哲が、よたよたと後ろへ下がっていく。今どこに居るのか理解しているのか、後ろに下がってもどこにぶつかるでもない慣れた足つき、目的地は台所なのだろう、どうやら刃物は持ってはいない。こちらをじっと睨む目が僅かに揺れるが、視線が大きく外れる事もない。
「……阿哲」
「後生だ、万次さん、動かないでくれるか……己は今、人を斬りたくて仕様がない」
×××
むせ返るような血の匂い、ぐらりと揺れる頭で部屋に入る。口や胸の辺りを真っ赤に染めて、目を閉じぐったりとする兄と、やはり首元と胸を血で染めながら、兄を抱える居候の男が目に飛び込んでくる。血、血の匂いだ。目眩がする。口元を押さえた。口の中に溢れ出す唾液を飲み込む。彼らを見ないようにして、窓を開け放った。はあっ、と息を吐き、外の空気を目一杯に吸う。
「お前らほんっと、難儀だなァ」
「……血の匂いは己らにゃ毒だ、万次さん」
「ああ、だろうな。阿哲の発作は初めて見たが、相当じゃねえか。よくここまで持ったな」
「自分らでなんとか騙し騙しな。……兄上に首斬らせたのか?」
「そんな事したら己が死ぬだろうが。自分の身体切るっつうから止めたら噛まれたんだよ、肩を」
「……その量見ると、噛み切られたんだな」
「痛えのなんの、久々に酷ぇ痛みを味わったね」
「ところで万次さん、気絶する高校生抱き締めてるおじさんの図、あんまりにも事案なんだが」
「テメーあとで覚えてろよ」
×××
近付くなという子どもは、酷く何かを恐れているようで、あれは、そうだ、遥か昔に一度見た事がある。奴の妹、一番下の青と呼んだまだ小さな子どもが、もう誰も殺したくないのだと泣きながら、やめてくれと叫びながら、追っ手へ刀を振るっていた時の顔と似ているのだ。
「阿哲、お前今、武器もなにも持ってねえんだな」
「当たり前だろう、持っていたら、己は、人を、殺してしまう、殺してはならんのだ、今世は、決して」
だからこそ、許される範囲で衝動を抑える方法を模索しているのだ、それの行き着いた先が自傷なのだろう、それ以外に、生きた人を切る術がない。あるにしても、それをしてはいけない事もわかっているのだ、他人を切ったら最後であると、狂うきっかけなど作らぬに越したことはない。
「阿哲」
「切らなければ、自分の肉で良いんだ、そうすれば治まる……」
まだそう遠くはない。手を伸ばして腕を掴む。
昔はそう簡単に捕まえる事も出来なかった。人を斬っても逃げ延びる事も出来た、刀を佩いているのが普通で、斬り合いなんかも多かった。我慢する事も無かったのだろう、故に、ここまで弱る事も無かったのだ。
今は違う。相手は、衝動を抱えた可哀想な子どもなのだ。それを発散する事もままならない。
悲鳴をあげるかのように、こちらの名を呼ぶ。やめてくれ、聞いたことのない哀願にも近い叫び声。これをあの男が発しているのかと思うと、なんとも言えない心地になる。こちらに懇願してくるのか、あの、阿哲が。一時期、無骸流から逸刀流から何処からとその腕を求められて多方向から追われていたあの最強とも呼び声の高かった、あの男が、この己に。
「放してくれ、己はそも、お前さんを、ばらしたいんだ」
「でも今道具がねえんだろ。大人しくしてろ」
「だから……ッ!」
ぎゅうと力を込めて抱き込む。昔はこいつの方がデカかった。今はまだ成長途中か、今世はここまでなのか、己よりも小さい身体を抑え込むのに苦労はしない。
「少し、少しで良いんだ、切らせてくれ、自分の肉で治まるから」
「だったら己を斬れ阿哲。それで効かなくなるなら己だけを斬りゃ良い。己だけを見てろよ……ずっとお前の隣にいてやっから」
ごくりと奴の喉が鳴ったのを聞いた。人を斬れるという未来を見ただけで、心が揺れたのだろう。抱き込んでいるとよくわかる。先程まで何とか拘束から脱しようとしていたのに、その言葉を飲み込んだ事で動きが止まった。
「己は、そんなことのために、お前さんを、連れて来たんじゃ、ない……」
暴れていた腕が、背に回される。
「すまない、万次さん」
肩口に痛みが走った。
×××




03/25 10:58


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