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◎現パロ


天城の兄弟の全員と剣を交えたことがあるが、どいつもこいつもずば抜けた才能を持っていた。
奴らはそれぞれそのせいで、ある種苦しんで生きていた。斬りたいという欲求と、斬りたくないという意思の中で揺れ、振り回され、全員が別の道に落ちていった。
「万次さん、野良?」
己を見つけたガキはそう宣った。公園のベンチ、昼間から寝転がっている男に声をかけようという人間はそうはいない。そこにあって、奴は友人を見つけたのだと言わんばかりの気安さで、さも当然のように声を掛けてきた。
天城の長男。その面影のある学生だった。だが、本人であるはずがない。あり得ない話だ。今は令和の時代、あの男が生きていたのはもう三、四百年ほど前の事になる。
「アァ? テメエ誰だ、何で己の名前を知ってる」
「……お爺ちゃんだものなあ、仕様がない。己の名前は阿哲だ、万次さん。天城阿哲。ホームレスのおじさんを見かけ、声をかける心優しい高校生というところか」
「自分で言うんじゃ、ねえ……今阿哲つったか?」
「そうだ。天城阿哲。お前さんは江戸期に生まれた万次さんだろうが、己は平成生まれだ。ま、なんだな、輪廻転生というやつなのだろ」
似た男を見つけたため思い出されていた古過ぎる記憶、それに付随してやはりぼんやりとした記憶が幾つか蘇ってくる。そんなはずねえだろ、と呟けば、お前さんみたいなのの方がよっぽどあり得ない存在ではないかと返された。
「己の家においで、どうせお前さんホームレスだろう」
「おい決めつけんな」
「……何? 住居があるのかお前さん!? はあーっ、お前さんが定職につけるたぁ……魂消たなあ」
「……馬鹿にしてんだろ。テメーの想像の通り住所不定無職だよ」
「矢張りな。万次さんは定職には付けまいよ、不老なのだからなあ……ほら、行くぞ万次さん。心配しないで良い、うちはあとは弟妹だけだ。父母は居らん」
そう言って己の体を起こし、ベンチから強引に立たせると、腕を引いて歩き出す。
「……斬ってねえだろうな」
昔のこいつは、一族郎党皆殺しという具合に、弟妹を残して家族からその家に仕える人間から全てを斬り殺し、次いで上司の家族も全て斬り、挙句追っ手も全て斬り殺していた。まさかこの時代にそんなことをするまいとは思うが、昔の奴を知っている自分からすれば、無くもないように思える。念の為確認しておくに越したことはない。
「ハハハまさか、流石に己もこの時代ではまだ誰も殺しちゃいないぞ、切る事はまあ、無くもないが……」
言葉が俄然物騒な上に少し言葉を濁すあたり、どうやら昔とそう変わらないようである。この時代で生きるのは苦しそうだ。
「まだっつったか」
「未来はどうなるかわからんだろう、何かの弾みで殺してしまうかもしれん、気を付けはしているがね」
「で、親はどうしたんだ」
「なあに、ただの交通事故死さ」

×××

ほとんど全員生きとるが、ちょっと倫理観的にヤバい人達は死刑囚として禁錮されています。


03/24 06:40


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