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- ナノ -


◎戴ちゃん


人間の首が舞う。血の曲線を描き、ごとんと地面に落ちて転がっていった。一時的な静寂。ひぐ、小さな音だけが不規則に続く。

「てっめえええええ!!!」
「やだあああっ!来ないで来ないで来ないでぇ!」

ぶおん、空気を切りながら振り回される両刃剣に、彼らはたたらを踏む。先ほどの仲間はこの刃物で首を飛ばされたのだ。
西洋の可変型武器。あまりに特徴的過ぎるその武器のおかげで、使用者の容姿は明らかではなかった。だが、これを操るのは元逸刀流であると言うことだけは絶対であり、故に、その子供は追われている。
元逸刀流。その中で生き残っているのは少数だ。更に、手配書や人相書きがあるのは数える程もないだろう。
逸刀流を憎む者は少なくない。だが、その流派に属する剣士達は、恐るべき剣術を誇っていた。どれほどに憎らしくとも、常人には敵わぬ剣士。その中で、一際異彩だったのがその幼子である。逸刀流の末席に座し、特徴的な武器を使用するかの子どもは、彼らにとって絶好の的なのである。子どもであれば、何とかなるのではないか。そう思うのも、何ら不思議ではない。
逸刀流があった時代なら、子どもの周りには多くの手練れが立っていた。手出しすらできなかったのだ。だが、今、逸刀流は無い。故に、子供は多くの人間から命を狙われていた。
がしゃん、鈍い金属音を立てて両刃剣の形が変わる。ふおん、刃が回転しながら空気を切り裂き、同時に追っ手の幾人かを巻き込んでいった。

「追ってこないでよお!」

血を振り撒きながら子どもは叫ぶ。
なぜ、追われているのかわからなかった。何人殺しても、何人追い返しても、数日後には誰かが命を狙ってくる。逃げ続けて、今はもうどこにいるかもわからない。元々お金は持っていない。路銀がないのだから、宿に泊まった事もなく、安心して布団で眠ることもできず、もう何日も身体を洗っていない。食事だってきちんとしたものは食べていない。木の皮を剥ぎ、土を食んで凌ぐ毎日を、奴等は強いてくるのだ。どうしてと思わずにはいられない。
兄だっていつの間にか消えて無くなってしまった。統主もまきえも、そうすけもこじもすけざねも死んでしまった。どうあもいさくもおずはんも、知っている人も頼る人も居なくなって、一人で生きていくしかないというのに。
安全に、安心して眠る日をこいつらは簡単に奪っていくのだ。許せるわけがない、許せない。なぜ、命を狙うのだ。
ざ、と走っていた足を止める。がしゃん、鎌の形を短剣に戻して鞘へ納めた。

「……どうして」

ごとん、と背負っていた鞘を降ろす。腰にある、ふた振りの短剣を引き抜いた。

「青を殺そうとするの!」

×××

「オメーな、何も泣くこたねえだろうよ……」

わあわあと泣きながら己にしがみ付く子どもの頭を撫でてやりながら、息を吐いた。
青。逸刀流の中でも最年少と言っていい剣士だった。かなり特殊な武器を使い、その特異性と素早さが強さに直結する、特殊な存在。天津も心を砕いていたように思えるし、似た戦闘法の瞳阿や怖畔とはよく一緒にいたのを見てはいた。

「有明はどうした?」

どん、と胸を叩かれた。知ってるだろうという意味だ。そうでした。五人で共に江戸城へ押し入り、水戸路へ行く途中で逸れてからそれきりだ。馬絽と別れる時には居らず、それから会えずじまいなのだ。何処かで生きていると思っていたが、弟の元へ帰ってきていないということは、そういう事、なのだろう。

「みん、な、青を置いてった、みんな、青はこれから、ひとりで、ひとり……ッ」

ずっと放りっぱなしだったのか。そういえば、阿葉山さんの一行にも入れていなかった。何処かで留守番させられていたのだろう。それからずっと、追われ続けて、あれか。
先の惨状を思い起こした。子供に対して寄ってたかって、大の大人達が刀を振り回す光景。相手が青だったからこそ彼らは地に伏したが、それでも追われる恐怖から刃物を振り回す青は、今まで一度だって見たことがなかった。グラントルコも万次さんに譲り、最早剣を捨てた身であっても、流石に見過ごす訳にもいかず、助太刀に入って今に至る。

「ほらもう泣くなって。俺が一緒にいてやるから……」

あ、いま凄い恥ずかしいこと口走った。
青を置いていったのは自分も同じだ。こうなった責任も少しはある。そう思ったら、うっかり、言ってしまった。
青はまだ小さな子どもだ。保護者はまだ必要で。そりゃあ自分だって周りからすればガキだなんだとは言われるが、こいつに比べたらもういい大人である。保護者の代理くらいにはなれるだろう。

「ほんと? ほんとに? たいちゃんは、青をもうおいてかない?」

一度置いていったのだから何度も確認したくなるのは仕方ない。泣き付く青を少し離して、膝を折った。目線を合わせる。うわ、血と涙と洟水でグズグズじゃん。袖で顔を拭ってやる。
兄の有明も目元の涼しげな色男だったが、やはり血の繋がりなのか、まだ幼いながらも似た雰囲気を感じる。大きくなったらああ言う風になるのか、こいつも。

「もう置いてかねーから、安心しな」

うん、と青が漸く笑った。

「とりあえず……ひっ被った血ィ流すか」

×××

この後一緒に風呂に入ってくれと駄々をこねられ一緒に入ってやったらあるあずの物がなくギャーと叫び飛び出すたいちゃんであった。
青は甘えっ子なので添い寝も所望します。たいちゃん一緒に寝て!!!一人で寝られねーのかオメーはよ!!!寝られない!!!あーもうわかったよほら来い!!!ワーイ


03/07 11:58


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