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◎MHA


賽河くん!

「賽河、お前やる気あるのか」

入学式の参列を取りやめて行われている、除籍処分のかかった個性把握テスト中に放たれた言葉だった。
言われた本人は投球したフォームのまま、相澤を見る。38.2メートル、と距離が遠くから聞こえた。

「はあ……結構真面目に取り組んでますけど……」

周りが個性を使用し、化け物じみた記録を出す中、賽河は全ての種目において平凡だった。それもそのはず、彼は個性を一度たりとも使用していないのだ。個性把握テストと言われたにもかかわらず、である。これだけではただの体力テストと変わらない。

「俺の個性は超能ですから、あんまこういうところで使えるもんじゃないっすよ」

ぱし、と彼の手に向かって飛んできたのは、先程投げたボールだった。それを次の生徒へと手渡してから、ううんと唸る。

「念動力、テレパシー、テレポート、アポーツ、サイコメトリー、予知、透視、千里眼、念写、発火……」

記憶にあるものを思い出すように指折り数えながら、彼は喋る。

「有名どころはこれくらいすか。使えないでしょ、体力テストなんかじゃあ。まあ、除籍になるならなるで構わないんすけどね。そうなったら、中卒で今から働けるところ、まあ、なんとか探してみます」

肩を竦めて見せた彼の目には、他の生徒達と違って必死さはない。流れに身をまかせると言わんばかりだ。そういう態度がやる気がないと言われる所以なのだが、改める気もないようである。

「先生、次つっかえてますよ」




10/04 04:42


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