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「#幼馴染」のBL小説を読む
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◎MsSM


「ハワード!」
顔面でロケットを受けた友人の名を咄嗟に叫んだ。スーツパワーを発動し、ガジェットを駆使して周囲の悪党を瞬時に蹴散らし、急いで彼の身体を回収して高所へ避難する。仲間を呼ばれる事はまずないだろうが、上半身のない友人を抱えてまた何十人と相手にしていられない。
ユリに電話を掛けて先ほどの場所を伝える。焦った声が伝わったのか、始終心配されたがなんとか乗り切って電話を切った。少し強引だったかもしれない。だけど許してほしい。友人の葬式に出なきゃならなくなったのだから。
「ハワード、ハワード!どうやってこんな、こんな……上半身が無くなっただなんて君のお祖母さんに説明したらいいんだよ!?」
だから危険だと言ったのに。スーパーパワーを持たない彼やMJ、今はヨーロッパへ留学中のハリーはいつだってその身に宿す正義で危ない事に首を突っ込むんだ。MJはちょっと、好奇心もあるんだろうけど。
「……気に病まないで、ピーター。僕は平気」
「平気!?これが!?君の頭は吹っ飛ん、だん、だ……あぁああ!!!!??うわっ!うわああっ!お、お化けっ!!!???」
「僕だよ。正真正銘のね。ほら、触れられるだろ」
破れたシャツから露わになった、しっかりと鍛えられている彼の肉体が眩しい。
さっと手を取られ、ウェブ・シューターをなぞられた。ああ、本当に君なんだねハワード。でも待って、どういうこと? ハワード、君は確かにロケットを顔で受けて上半身は粉々、僕もちょっとだけ君の血をひっ被ったんだけど?
「初めて見るんだっけ。つまり君の前で死んだのはこれが初めてって事だ」
「初めてだよ!もの凄く焦った!君のお祖母さんになんて説明しようかとか、君のお葬式に出なきゃいけないなんてとか、考え、て……ちょっと待って。"君の前で死んだのはこれが初めてって事だ"?ハワード!?君、もしかして何度もこんな事になってるの!?」
「知らないわけじゃないでしょ、スパイディ。猫に九生有り、だ」
無事だったウエストポーチから取り出したのは、迷彩柄のキャップにツアーマスクとアイウェア。キャップについた小さな三角の布は、これに、そう、いつもはもっとそれらしく、サバイバルゲームプレイヤーの姿をしているはずだ。
「と……と、と、とと、トミーッ!?」
トムキャット。不死身の肉体を誇る、我が州でも有名なヴィジランテ。ああそんな、嘘でしょ神様!
「わからなかった、スパ〜イディ〜?」
彼は揶揄うように僕を呼ぶ。ハワードの時は一度だってないのに。
蜘蛛を捕まえる猫のように、彼は何故かよく僕を捕まえていた。僕よりも大きな背、体格だって悪くない。筋肉は僕の方が上だし、スーパーパワーも僕の方が優っている、なんて喚いた時もあったのに。あれがみんな、ハワードだったなんて!ああ、クソッ!わかったぞ!だからあの時笑ってたんだな!
「どうして教えてくれなかったの!?不公平じゃない!?8年前から僕は君に正体を明かしてたのに!」
「……流石に不死身だけが取り柄のヴィジランテが僕だよ!なんて言えるわけないでしょ」

×××××
ウーン


10/07 15:16


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