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◎人外挟む


「大丈夫だ、兄さん。安心しろよ。俺はあんたの味方だぜ」

「あんた本当にその人が犯人って断言できるのか?この状況だ。もしかしたら犯人はあんたかもしれない。その人が犯人なのかもしれないし、俺が犯人かも知れねえだろう?決め付けるのは、良くないぜ?」

「なーに言ってんだよ。殺してようが、殺してまいが、あんたがあんたであることに変わりはねえ。誰も兄さんを批判する権利はないんだ」

「異議あり!へへ、ちょーっと言ってみたかったんだよな、この台詞。で、あんたが言ったその証拠ってのは、これのことかあ? 俺が持ってるんじゃ、俺が犯人になっちまうな。で、どうするんだよ、名探偵?」

「たしかに法は存在する。罰則だって受けるだろうよ。だけどそれだけだろ。なにか勘違いしてるようだけどな。どうして人を殺しちゃいけないんだ?お前も答えられねえんだから、偉そうにするなよ、少年」

彼らは守るべき人間だ。だから俺が人間も守るのも当然だろう。だけど死は人間たちに平等に訪れるもので、それが肉体の衰弱であるのか、臓器の不全によるものなのか、外からの刺激が原因であるのか、それらがもたらす死が人間に降りかかったとして、俺が無理に関与すべきものではない。運命がどうとか、そういうものではなく、手の届かない範囲をどうにかしようったって、無理なものは無理なのだ。それをどうにかするっていうのは、それこそ歴史修正主義者と同じになってしまう。過ぎたことはどう足掻いたって元に戻すことはできないし、未来だって思うように動かせない。彼女が死んでしまったのは、ここが彼女の天命だったからだ。俺はどうやったって彼女が殺されるなんて予期できなかったし、仮にその情報が手に入っていたとしても、彼女を救うには何歩も及ばなかったはずだ。俺がどんなに走り回っても、彼女の運命に介入できない。どう転んでも間に合わなかったのだ。だからと言って、後悔するなとは思わないし、悔しがっても良いだろう。実際、胸の中には間に合わなかった罪悪感だって残っている。彼女の最期が目に焼き付いてこびりついてしまっている。俺は刀だったが、そうであった、というだけだ。今は守るべき人間の輪の中、どっちつかずの蝙蝠の逸話にも似ている。
そんな状態の俺でも、わかることはある。例えば今、俺は彼を全身で守らねばならないということだ。
彼は罪を犯した。それを償う機会があるならそうすべきであって、その償いは、決して他人からの中傷という呪詛をもらうべきではないし、それを溜め込むべきでもない。もちろん、これ以上彼のためにも罪を重ねるべきでもない。
どうして人を殺してはならないのか。そんなのは誰にも答えられない。俺は刀だった。使われて人を斬ったこともあろう。俺は人だ。まだ、なんの罪も犯していない。どうして人を殺してはならないのか。わからないし、きっと一生答えが見つかることはないだろう。ただ、俺は今、人を殺したくないのだ。ならば、そう行動すべきだろう。

「安心しろって。言っただろ、俺は兄さんの味方なんだってな」


03/30 20:11


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